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2026.08.06

なぜ「正しい選択」は広がらないのか? 消費者・農家・企業の行動から考える持続可能な食料システム

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消費者の「十分に取り組んでいる」という誤解を、情報の届け方で解消する

 「意識と行動のギャップ」は、たとえば消費者の購買行動に見ることができます。一日に適量の野菜を摂取すると体に良いということは、誰もが知っている常識と言っていいでしょう。ところが、日本人の野菜摂取量は国の推奨する水準に達していないどころか、むしろ微減しているのが現状です。これまで政府は「健康のために野菜を食べましょう」といったキャンペーン型の政策を展開してきましたが、ここ20年ほどは全く効果を挙げていないということになります。

 そこで私は、ビッグデータを用いて購買行動をモニタリングし、同時にアンケートによって意識と行動のギャップを検証することにしました。その結果、ほとんどの人が摂取不足にもかかわらず「自分はすでに十分野菜を摂っている」と誤解していることがわかりました。

 それでは、どのようなメッセージなら消費者の行動を変えられるのでしょうか。さまざまなメッセージを発信して効果を検証したところ、最も効果が上がったのは、その人の過去の購入履歴を参照して「同年代・同じ性別の人と比較して、あなたの野菜消費量はこれくらいです」と知らせるパーソナライズされたメッセージでした。周囲の平均と比較することで、「十分に摂取できていると思いこんでいるが、実際はできていない」という認知のズレを解消することが必要だったのです。

 また、子どもがいる家庭ではとくに行動変容の結果が長続きすることもわかりました。これは、家族の健康を案じるという利他的な動機が行動に強く働きかけるからだと考えられます。

 実験結果からは、従来の手法で行動変容を促すことの限界も伺えます。日頃の購買の場面で私たちはほとんど無意識に商品を手に取っています。スーパー店頭の掲示物などで環境への配慮や健康効果を訴えても、なかなか消費者の目に止まらず、日常的な食習慣を変えるまでには至らない。こうしたことが、健康や環境に配慮した食品が手に取られづらい背景にあるのではないかと考えられます。とくに、まだまだ馴染みの薄いプラントベース食品となると、行動変容を持続するハードルはさらに上がります。

 また、こうした情報発信による働きかけが、誰に対しても効果を発揮するわけではないことにも注意が必要です。所得の低い世帯や、食料品店へのアクセスが限られている地域では、情報だけでは行動を変えにくい場合もあります。行動経済学的な介入は万能ではなく、制度的な支援や経済的対策と組み合わせる必要があることも、研究から示唆されています。

英語版はこちら

※記事の内容は、執筆者個人の考え、意見に基づくものであり、明治大学の公式見解を示すものではありません。

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