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2026.08.27

植物の「腹ペコ生存戦略」の解明が、農業生産の未来を変える?

植物の「腹ペコ生存戦略」の解明が、農業生産の未来を変える?
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動物と異なり、一度根を張ると移動することができない植物たちは、栄養の乏しい土壌でも生き残るためのさまざまな戦略を備えています。こうした植物の「腹ペコ生存戦略」を解明する研究が、農業生産の未来を切り拓く糸口になるかもしれません。本稿では、植物の生育に欠かせない肥料をめぐる諸問題と、それらの解決策のひとつとして期待されるペプチドホルモンについて紹介します。

農業生産に重くのしかかる肥料削減という課題

田畑 亮 人間や他の動物と同様、植物も栄養がなければ生きていくことはできません。植物に必須の栄養素は14種類の元素で、そのうち主なものは窒素、リン、カリウムの3つです。自然の土壌はこれらの栄養素を必ずしも十分に含んでいるわけではないため、人類は肥料として補うことで農業生産を行ってきました。

 しかしながら、肥料の安定供給にはいくつもの課題があります。植物の成長に不可欠な窒素肥料は、空気中の窒素と水素を反応させるハーバー・ボッシュ法によって製造されますが、この過程には莫大なエネルギーが必要です。一方、リンやカリウムは鉱物資源から生産されますが、これらは有限資源であり、このまま採掘を続ければ数百年以内に枯渇する可能性も指摘されています。将来的には、肥料不足が農業生産に深刻な影響を及ぼすことが懸念されます。さらに、肥料価格は世界情勢に大きく左右されるため、ロシアによるウクライナ侵攻などの影響を受け、肥料原料の国際価格の高騰が続いています。

 その一方で、農業現場では収量を確保するために過剰な施肥が行われることも多く、別の問題を引き起こしています。余剰の肥料成分が河川や海へ流出し、水質汚染の原因となるほか、土壌中に残留した窒素肥料は微生物によって分解され、一酸化二窒素という温室効果ガスを発生させてしまうことが知られています。このように、本来は限りある資源である肥料成分が、環境汚染や温暖化の一因にもなっているのです。

 この問題にいち早く対応したEUでは、2030年までに化学農薬を50%、化学肥料を20%削減する「Farm to Fork 戦略」を2020年に開始しました。日本でもこれに続き、2050年までに化学農薬を50%、化学肥料を30%削減する「みどりの食料システム戦略」が2022年に策定されています。しかし、こうした政策に対しては、収量が生活に直結する農業従事者から懸念の声も上がっています。

 肥料の使用量を抑えつつ収量を維持することはできるのでしょうか。その実現には、植物や土壌に対する理解をさらに深める研究が不可欠です。

英語版はこちら

※記事の内容は、執筆者個人の考え、意見に基づくものであり、明治大学の公式見解を示すものではありません。

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