学びを加速させるアドバイス垣根を越えた経験と交流が、課題への向き合い方を広げてくれる
教授陣によるリレーコラム/学びを加速させるアドバイス【37】
ひとつの道を究めるスペシャリストのような人は、頼りがいがあり、魅力的だと思います。一方で、私自身はそうしたタイプではありません。むしろ、これまでさまざまな大学や研究手法を経験してきたことが現在の研究成果につながっていると感じています。
現在、私は植物のペプチドホルモンの研究に取り組んでいます。学部時代は新潟大学に在籍し植物病理学を学ぶとともに、在学中にはオランダの農場で働く経験をしました。20歳で海外に出て農業の現場に身を置き、実際の課題に触れたことは、今振り返っても非常に大きな経験となっています。卒業後は奈良先端科学技術大学院大学に進学し、構造生物学の研究室において植物タンパク質の立体構造解析に取り組みました。しかし次第に、より植物そのものを対象とした研究に携わりたいと考えるようになり、植物研究が盛んな名古屋大学へと進みました。そこで多くの研究仲間と切磋琢磨し、開花を制御するホルモンに関する研究を通じて学位を取得しました。その後、博士研究員として複数の大学や研究機関で研究を続ける中で、現在の研究テーマにつながる、植物の栄養吸収を制御するペプチドホルモンの研究に出会い、現在に至っています。
結果として、「植物」という大きな軸を持ちながらも、異なる分野や研究手法に触れる多くの機会に恵まれてきました。
さまざまな分野を経験して良かったと感じる点はいくつかありますが、ひとつは、課題に直面した際に、多角的な視点から検討し、実現可能性の高いアプローチを選択できるようになったことです。この点では、他分野の研究者との交流も非常に重要でした。植物ペプチドホルモンの機能解析を進めるなかで、他研究室の先生方との意見交換が、新たな突破口につながったこともあります。
もうひとつは、自分の研究テーマの周辺にある、別の課題にも自然と目が向くようになったことです。そもそも、社会に存在する多くの課題は、ひとつの分野だけで完結するものではありません。私の研究も、ペプチドホルモンを分子として化学的に解析するところから始まりましたが、植物の生存戦略にどのように寄与しているのか、さらには農業生産に関わる社会的課題にどう応用できるのか……と視点を広げていくことで、研究の意味や射程も大きく広がってきました。そうした課題に気づくためのアンテナを張るという意味でも、異なる分野に触れ、積極的に知ろうとする姿勢は大切なのだと思います。
キャリアのあり方に正解はありません。しかし、自分の専門領域に閉じこもるよりも、分野の垣根を越えて多様な人と対話できるオープンな意識を持つことが、結果として活躍の場を広げてくれるのではないでしょうか。
※記事の内容は、執筆者個人の考え、意見に基づくものであり、明治大学の公式見解を示すものではありません。
