
空気や水といった流れる物体=流体の振る舞いを解析する学問が、流体力学です。流体は私たちが生きるうえで欠かせない、とても身近な存在です。しかしその動きはとても複雑で不思議なもの。流体力学の謎を解き明かすことが実は、限りあるエネルギー資源の有効活用や、火災が発生した際の事態収束、汚染物質の発生源特定など、さまざまな社会課題の解決にもつながるのです。
熱交換器の形状最適化や対流輸送の制御で、エネルギーの有効利用を
流体は予測が非常に困難な振る舞いをします。流体もニュートンの運動方程式、F=ma(力=質量×加速度)に従って運動しますが、振る舞いの予測には一般的にコンピューターが不可欠であり、それも万能ではありません。たとえばエアコンから吹き出る空気も、少し離れてしまうとコントロールするのが難しい。流体の複雑な振る舞いが少しずれるだけで、その影響が予想だにしない形で出てくるのです。
私たちの研究室では、数値解析や実験、深層学習などを用いて、流体の研究に取り組んでいます。なかでも流体の移動によって熱や物質が運ばれる現象、対流輸送を対象としているため、熱や物質が流体により運ばれるものであれば、どんなものでも研究テーマとなり得ます。現在、取り組んでいる課題の一つが、エネルギー問題です。
エネルギー資源は多くの場合、熱という形で輸送され、さまざまな機器を作動させます。たとえば火力発電所で化石燃料を燃やして熱を生み出し、それを動力としてガスタービンを回すことで、電気エネルギーに変換することができます。しかし化石燃料の持つエネルギーの総量が、電気エネルギーとなって私たちのもとへ届くわけではなく、変換される過程でロスが生じます。ロスを減らせば、必要とする化石燃料も、気候変動に関係する燃焼ガスの発生も少なくなる。その結果、エネルギーだけでなく、気候変動の課題解決にも近づきます。
そのため私たちの研究室では、熱を輸送する「熱交換器」の高性能化につながる、伝熱面の最適設計技術を開発しています。たとえば熱を輸送する流路に柱を立てていくと、熱交換する伝熱面の表面積は増えますが、熱を輸送する流体が流れにくくなってしまう。同じ流速を出すには、流体を流すポンプによりエネルギーを使うことになります。熱交換性能と流体の流れやすさの両方を高める最適な形状を、数値解析や機械学習によって見つけ出すことが、私たちの研究課題の一つです。開発した理論を使い、コンピューター上で解析して出てきた形状が適切かどうか、3Dプリンターを利用した実験も行っています。
流体の複雑な挙動を完全に制御するのは困難ではあるものの、できるだけ余計な影響を及ぼさずに流体を移動させる装置も開発中です。輸送する流体を制御できれば、流れの抵抗を減らしたり伝熱を促進したりと、多くのメリットが生まれます。めざすのは目的に応じた対流輸送の自在な制御です。
※記事の内容は、執筆者個人の考え、意見に基づくものであり、明治大学の公式見解を示すものではありません。
