Meiji.net

基礎を身につけて「鑑識眼」を育てよう
2026.06.10

学びを加速させるアドバイス基礎を身につけて「鑑識眼」を育てよう

リレーコラム
  • Share

教授陣によるリレーコラム/学びを加速させるアドバイス【29】

学ぶことが好きで、最初から好奇心全開で取り組める人もいるでしょう。しかし多くの学生にとって、何かを学び始めるというのは、実のところ忍耐を伴う作業です。最初は面白さがよく分からず、なぜこれを覚えなければならないのか腑に落ちない。そうした段階を避けて通ることは、ほとんどの場合できません。

ただ、気になった分野やテーマについて、知識や経験を少しずつでも積み重ねていくと、ある時点で「鑑識眼」と呼べるような視点が育ってきます。そうなると、それまでとはまったく違う世界が見え始める。私は、学生にはぜひそこまでたどり着いてほしいと思っています。

私は環境デザインや都市計画を専門としており、ゼミでは学生と一緒に都市を歩き、フィールドワークを行っています。その過程でよく感じるのは、基礎的な知識を身につける段階の大変さです。

たとえば、樹木の樹種を覚える際に、学生に「これはクスノキ、これはケヤキだ」と言っても、なかなか身につきません。自分自身の学生時代を振り返ってみても、樹木の名前を地道に覚える作業は、正直なところ、なかなか辛かった覚えがあります。

ところが、不思議なもので、少しずつ「分かるもの」が増えていくと、あるところから急に楽しくなってくる瞬間があります。これはクスノキだ、これはケヤキだ、と見分けられるようになると、街の風景が違って見えてくる。そこまで行けたら、あとはしめたものです。最初はしんどくても、地道に積み上げていくと、ある瞬間に「面白さ」が一気に立ち上がってくるのです。

知識や経験というのは、最初に積み上げる段階がいちばん大変です。面白くないし、成果も見えにくい。けれども、あるラインを越えると、視界に入ってくるものすべてが意味を帯び始めます。街を歩いていても、以前は何も感じなかった建物が、「これはアール・デコだ」「ギリシャ建築のオーダーが使われている」「近代のロシア・アヴァンギャルドの影響が見える」といった具合に、語りかけてくるようになる。

そうなると、街を歩くこと自体が楽しくなります。これまでただ通り過ぎていただけの風景が、意味に満ちたものとして立ち現れてくる。情報量が増えて少し頭が疲れることもありますが、その分、世界は格段に豊かになります。知識が増えるにつれて楽しさも増し、同時に自分の「鑑識眼」も確実に育っていくのです。

これは、学問の世界に限った話ではありません。ビジネスの現場でも同じことが言えるでしょう。始めたばかりの仕事は、なかなか面白さを感じられないものです。しかし経験を積み、知識が蓄積されていくと、ある時を境に視界がパッと開ける。その瞬間を迎えるためにも、最初の段階で我慢して学び続けることは、やはり大切なのだと思います。

※記事の内容は、執筆者個人の考え、意見に基づくものであり、明治大学の公式見解を示すものではありません。

  • Share

あわせて読みたい