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2026.08.27

植物の「腹ペコ生存戦略」の解明が、農業生産の未来を変える?

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植物の栄養吸収を制御するペプチドホルモンの働き

 私は名古屋大学在籍時から、植物の栄養吸収のメカニズムに着目した研究を進めてきました。

 脳や神経を持たない植物は、動物のように「考える」ことができないと想像されてきました。実際、植物は外部からの刺激に対して、根や葉といった各器官が個別に反応する局所応答が主流だと理解されていました。しかし近年の研究により、植物も体内で活発に情報をやり取りし、あたかも全身で状況を判断しているかのように振る舞うことが明らかになってきています。

 この情報伝達を担うのが、ペプチドホルモンです。ペプチドホルモンは複数のアミノ酸からなる分子で、植物体内に多数存在しています。私は15個のアミノ酸から構成される新規のペプチドホルモンを同定し、その機能を解析した結果、窒素の栄養吸収に関与することを明らかにしました。そのメカニズムは次のようなものです。

 自然界の土壌は必ずしも均一な環境ではないため、根の一部のみが窒素欠乏状態になることがあります。このとき、欠乏した根は「空腹シグナル」としてCEPペプチドを産生し、維管束を通じて葉へ送ります。葉ではシグナルが受容されると、今度は「指令シグナル」としてCEPDポリペプチドが作られ、窒素が十分に存在する別の根へと送られます。これにより、窒素を取り込む輸送体(NRT2.1)の発現が促進され、全体として効率的な窒素吸収が実現されるのです。

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植物は全身を駆け巡るシグナル伝達によって栄養吸収を制御している

このように植物は、局所的な機能低下を全身的な情報統合によって補い、全体としての栄養状態を維持しています。私はこの仕組みを「腹ペコ生存戦略」と呼んでいます。なぜわざわざ葉で情報を集約するのか、詳しい理由はわかっていませんが、葉は光合成を担う生命活動の中枢であり、最も栄養を必要とする器官でもあります。だからこそ、全身の情報を束ねる“司令塔”として機能しているのかもしれません。

英語版はこちら

※記事の内容は、執筆者個人の考え、意見に基づくものであり、明治大学の公式見解を示すものではありません。

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