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学びを動かすのは、99%の自分と1%のきっかけ
2025.12.24

学びを加速させるアドバイス学びを動かすのは、99%の自分と1%のきっかけ

リレーコラム
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教授陣によるリレーコラム/学びを加速させるアドバイス【19】

学びを深めるうえで何よりも大切なのは、教員ではなく学生自身の主体性です。これまで多くの学生と接してきましたが、教員ができることには明確な限界があります。私たちにできるのは、手を引っ張ることではなく、背中を押す「きっかけ」を与えること。そのきっかけをどう届けるかに、日々心を砕いてきました。

私の専門である考古学の魅力は、実践の中で自律的に学ぶ機会が豊富にあることです。遺跡を掘り、出土した資料を学生とともに考える現場では、教える側と教わる側という一方向の関係ではなく、対等に悩み、試行錯誤する時間が流れています。

たとえば、2週間にわたって発掘調査を共に行うと、わずか1年前まで高校生だった学生が見違えるほど成長します。自分の考えを試し、何かを発見する面白さに気づいた瞬間から、彼らは自ら動き始めるのです。その「自分で考え始めた」瞬間こそが、学びが加速するタイミングだと感じます。

また、学生か教員か、初学者か大家かという区別に関係なく、誰もが等しく「歴史をつくる」チャンスを手にしているのも考古学の魅力です。過去の人々が残した痕跡を手がかりに歴史を復元するというプロセスを踏めば、学部生の卒業論文であっても立派な学問的成果となりうる。考古学はきわめて開かれた世界なのです。

そうした現場で実感するのは、学びを加速させる99%の力は本人の中にあり、教員はその残り1%を与える存在にすぎないということです。私たちの役割は「自分で悩む楽しさ」に出会うためのヒントを渡すことにあります。微々たるようでいて、それが学びの世界を開く決定的な契機になるのです。

教育現場だけでなく、社会のあらゆる場面にも同じことが言えます。上司と部下、先輩と後輩といった関係もまた、教える/教わるの往還の中にあります。すべてを手取り足取り教えてしまっては、相手の成長にはつながらず、結果的に自分の成長も止まってしまうでしょう。

だからこそ、ときにはあえて「自分の弱み」を見せ、相手の発奮を促すことも大切です。リーダーといえども完璧である必要はありません。共に悩み、共に学びながら成長していく──その姿勢こそが、学びを加速させる最良のきっかけになるのだと思います。

※記事の内容は、執筆者個人の考え、意見に基づくものであり、明治大学の公式見解を示すものではありません。

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