
人生のターニングポイント相手の母国語での挨拶が、国際的なつながりを生むことに
教授陣によるリレーコラム/人生のターニングポイント【108】
私のターニングポイントは、大学の助手時代、アメリカでの国際会議に参加し、そこで同じ参加者であったトルコ国籍の研究者と出会ったことです。それ以来、彼との交流を通して、大きく国際交流の扉が開かれることになりました。
私が、修士1年のとき、初めて参加した国際会議の開催地がトルコでした。初の海外渡航に緊張しつつも、現地で困らないように、事前にトルコ語での挨拶や基本的なフレーズを学んで挑みました。
その8年後、アメリカ開催の国際会議に参加したのですが、その懇親会で、たまたまトルコ国籍の研究者との出会いがありました。彼がトルコ国籍だと知り、「初めまして!お会いできてうれしいです。」とトルコ語で挨拶をしたところ、「ワオ!トルコ語話せるの??」と、彼は目をとてもキラキラさせて驚き、「どうしてトルコ語話せるの?」と私に聞いてきました。私は「初めての国際会議がトルコで、それがきっかけでトルコ語を覚えたんだ。他にもトルコ語話せるよ!」と答え、何フレーズか、トルコ語を自慢げに披露すると、とても喜び、初対面でしたが、すぐに打ち解け、仲良くなることができました。彼は当時、ドイツのベルリン工科大学で助手を務めていたのですが、私は学生時代から、ドイツのものづくりにも大変興味がありました。そこで、いつかドイツに行ってみたいと考えていることや、お互いの研究について、時間を忘れて語り合ったのを、今でも鮮明に覚えています。
その時の会話がきっかけで、なんと、彼の紹介で翌年、ベルリン工科大学で8か月間の研究滞在が実現することになり、さらにその数年後、またまた彼の紹介で、ドイツ・ヴッパタール大学の教授と知り合い、ヴッパタール大学との共同研究や1年間の研究滞在、明治大学との大学間協定の締結を実現しました。また、定期的に実施している両大学での講演活動などを通じて、私だけではなく、明治大学の学生との学術的な交流も深まりました。現在、そのトルコ人研究者はドイツ・ボーホム大学の教授となり、研究面で意見交換するほか、お互いの国に訪れた際、家族ぐるみで会うなど、公私ともに交流を続けています。
なんのコネも人脈もない状態から、最初の挨拶一つでこれほど国際的な交流が生まれることに、いま振り返るととても驚きます。ちょっとしたきっかけが、こんなに自分の人生や研究に大きく影響し、20年も続く関係に発展するとは思ってもいませんでした。
この貴重な経験を通して、何気ない偶然の出会いが、当時は全く想像もできなかったほどの豊かなつながりへと発展することがあるのだと深く実感しています。出会いの価値は計り知れず、これからも一つひとつの出会いを大切にしていきたいと強く思います。
※記事の内容は、執筆者個人の考え、意見に基づくものであり、明治大学の公式見解を示すものではありません。