
人生のターニングポイント仲間と行う研究会の強制力が、研究へのモチベーションに
教授陣によるリレーコラム/人生のターニングポイント【91】
私のターニングポイントは、大学院時代の仲間数人と日本語学の研究会を始めたことです。5年ほど前から、2カ月に一度くらいの頻度で行っているのですが、現在の研究にも良い効果をもたらしていると感じています。
大学の教員はそれなりに忙しく、研究に時間を掛けたいと思っても校務などに流されて研究がおろそかになってしまうことがあります。学生時代はゼミがあり、大学院生の頃には2週間に一度ぐらいのペースで研究状況を発表しなければならず、それをペースメーカーとしていましたが、今はそれがありません。そこで、ゼミのつもりで研究発表しあうことにしたのです。
大きな研究会や学会などは、ある程度まとまっていなければ発表もできず、しかも開催日が半年先などになると、まずは事務的な仕事を片付けて、と優先順位が下がります。それが2カ月に一度、まとまっていなくても発表しなければならない状況ができたことによって、マイルストーンを刻んでいけるようになりました。
また、学生の頃は指導教員に見てもらえましたが、今は自分一人で論文を書くしかありません。一人で研究していると、思い込みが激しくなってしまいがちなのですが、「客観的じゃない」と人に指摘してもらえるステップを挟めたことも、研究の質を上げるのに役立っています。
加えて私は、学会などでネガティブな質問をされると、心が折れてしまいがちなのですが、信頼できる身近な人からは何を言われても平気なので、心の鍛錬にもなります。本当なら、叩かれても壊れない強いメンタルを持ちたいところですけど、自分には無理なので、折れない場で叩かれるのはとてもありがたく、本番への慣れにもなります。
研究会の参加者は皆、論文数が増えたようです。後輩の中には相当ジャンプアップし、大学の専任教員になれた人もいます。形から入ることも、ときには重要です。先に研究会の枠が決まっていて、やらなければいけないという強制力があるおかげで、モチベーションを高く保てています。
※記事の内容は、執筆者個人の考え、意見に基づくものであり、明治大学の公式見解を示すものではありません。