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書けなかったエントリーシート
2024.07.17

人生のターニングポイント書けなかったエントリーシート

リレーコラム
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教授陣によるリレーコラム/人生のターニングポイント【75】

大学3年生の冬頃、いよいよ就職活動が始まるというとき、私はエントリーシートがうまく書けませんでした。

もともと私は、幼い頃から図画工作などものをつくるのが単純に好きだったということもあり、就職するとしたらメーカーがいいなと、ぼんやりと想像してはいました。

しかし、いざエントリーシートで「学生時代に最もがんばったことはなんですか?」と聞かれると、自分に「書く力」がないというか、他の学生と差別化するような事柄が全然見つからなかったのです。今でいう「ガクチカ」が全く書けなかったわけです。

そんなこともあり、とりあえずは大学院に入って自分が興味があるテーマでちゃんと勉強してみようかなという気持ちで、修士課程へ進みました。今から考えると、なんとも安易な動機です。

学部生の頃からご指導をいただいたゼミの先生は、長年日本の製造業の研究をなさっており、工場見学などもたくさん経験させてもらいました。私は製造の現場を解読する面白さに夢中になり、修士課程修了後も就職をせず、博士課程へと進みました。

ですので、いま大学で生産管理論を教えていますが、最初から研究者を目指していたわけではなく、その時々で興味のあることをやってきた結果、さまざまな縁と幸運が重なって職を得たというのが実際のところです。

私は、学生のみなさんにはいつも「20歳くらいのときに、自分はこれしかしたくないし、これしかできないんだと、あまり決めつけない方がいいよ」と言っています。

大学時代というのは、自分で何かを選択しているようで、本当の意味での選択というのはまだほとんどしていません。就職にしても、希望した企業・業界に行ける人はわずかで、ほとんどは内定が出たからという理由で入社するものではないでしょうか。

でも、大学を卒業するくらいの時期は、それでよいと思います。

私から、若いビジネスパーソンや学生のかたがたに言えることは、20歳前後くらいで本当にやりたいことに突き進んでいる人は、それは立派ではあるけれど特殊な才能であって、自分と比べて変に焦ることはないということです。

むしろ大切なのは、そこからの10年、20年です。さまざまな経験を積み、おそらく30代くらいで、自分にとって本当の意味での選択をする機会がおとずれると思います。それまでに何を経験して、何を考えるかということが、一番大事なのではないでしょうか。

少なくとも、エントリーシートを書けなかったくらいで落ち込まなくたっていい。そのように私は思うのです。

※記事の内容は、執筆者個人の考え、意見に基づくものであり、明治大学の公式見解を示すものではありません。

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