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SDGsとビジネスを両立させるEVの可能性
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今、世界は2050年のカーボンニュートラルの実現に向けて、突き進んでいます。そのために日本でも、太陽光発電をはじめとする再生可能エネルギーの導入が、急ピッチで進められています。普及にあたり、大きな役割を果たすであろうと考えられているのがEV(電気自動車)であり、そこから派生するビジネスにも期待が寄せられているのだとか。いったい、どういうことなのでしょう。さまざまなEVの可能性について紹介します。

太陽光発電の電力を無駄にしている現状をEVアグリゲーターが打破

田村 滋 気候変動の原因となっている温室効果ガスの課題を解決するため、世界120以上の国と地域が「2050年カーボンニュートラル」という共通目標を掲げています。日本の場合、CO2排出量の約2割を占めているのが交通・物流による排出です。その量を減らすため、乗用車やトラック、バスなどのEV化が、国をあげて推進されています。

 EVを活用するには、いかに安く充電するかが重要です。一方で、そのバッテリーから余った電気を放電し、供給することによって利益を得られるビジネスも考えられます。それがEVアグリゲータービジネスです。アグリゲーターは、「集約する人」「まとめる人」を意味します。つまりEVアグリゲータービジネスとは、大勢のEVオーナーと契約し、バッテリーの充電や放電をすることによって電力を売買する事業のことです。

 電気料金は時間帯によって変わってくるため、例えば安くなる夜間に貯めて高くなる昼間に売れば利益が生まれます。大勢のEVオーナーと契約したEVアグリゲーターが、EVの充電や放電を自由に遠隔制御できるとすれば、状況に応じて電力を売買する商売が成り立ちます。もちろん、EV1台に貯められる電気量は大きなものではありません。しかし、EVが普及し、たくさんオーナーと契約できるようになれば、ビッグビジネスになり得るわけです。

 日本では再生可能エネルギーを大量導入しようとしているものの、休日など電気をあまり使わないときに太陽光発電でつくった電気が余り、無駄にしてしまっているという現象が、実は九州など日差しの良いところでたくさん発生しています。有効活用するためには貯蔵設備が必要ですが、大容量の蓄電池を導入することはコスト面で難しい。それに対してEVを利用する場合は、新たな設備が必要なわけではないためコストを抑えられます。太陽光発電は天候に左右されますので、雲がかかってきて急に発電量が減ったときなどはEVから電気を取り出して補充すれば、電力の安定供給にもつながります。

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※記事の内容は、執筆者個人の考え、意見に基づくものであり、明治大学の公式見解を示すものではありません。

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