
人生のターニングポイント子どもの一言で消えた迷い
教授陣によるリレーコラム/人生のターニングポイント【26】
私のターニングポイントは、幼い娘の一言を聞いた時です。
本学博士後期課程の1年目に結婚し、次の年に娘が生まれました。「体力のある若いうちに子育てをすれば、研究にも注力できる」という思いがあったのです。
しかし娘を生んだ翌年に筑波大学への着任が決まり、片道3時間の通勤をするようになると、仕事と子育ての両立は思うようにはいかなくなりました。
毎日自宅からの通勤をすることができず、週の約半分は大学近くのホテルで過ごし、他の日だけ家に帰るというありさまで、教員を続けることをあきらめかけていたのです。
そこで幼稚園に通っていた娘に「なかなか一緒にいられないから、お仕事をやめようかな?」と話しました。すると「ママは先生なんだからやめちゃだめ!」といわれたのです。
日頃から幼稚園の先生をとても大事に思っていた娘は、私とその先生を重ね「先生がいなくなるとみんなが困る」と思ったのでしょう。
その一言で、長距離通勤を始めた時から抱えていた「結婚したのも子供を産んだのも早過ぎたのかもしれない」という悩みを持ち続けても良いことはないと思えるようになりました。
「全てが中途半端だ」と後悔するのではなく、自分のやり方で、仕事のことも家庭のこともするしかない」という考えが芽生えたのです。
状況が変わったのではありませんが、私の中にあった迷いが消えたというわけです。いま、本学のロースクールで教鞭をとっているのも、娘のあの言葉があったからに他なりません。
働きながら子育てをしている方の事情はそれぞれだと思いますが、お子さんが話せる年齢になったら、気持ちや意見を聞いてみてはいかがでしょうか。
※記事の内容は、執筆者個人の考え、意見に基づくものであり、明治大学の公式見解を示すものではありません。