
フランスのダノンは株主総会で「使命を果たす会社」を宣言
前回述べたように、企業を取りまく環境が変わってきた背景には、SDGsやパリ協定をはじめとした、国連や国際的な動きがあります。それは、情報として発信されるだけでなく、教育を通して若い世代に浸透してきています。
つまり、市民の意識が環境や持続可能性に対してセンシティブになってきており、企業を見る目の変化にもなっているのです。それは、収益だけでなく、環境、社会、企業統治を重視するESG投資の増加などにも現れています。
そうした動きを象徴するのが、日本でも、ヨーグルトやミネラルウォーターの販売メーカーとして知られる、フランスの食品大手メーカーのダノンです。
フランスでは、新たな会社形態として利益以外の目標を達成する責任を負う「使命を果たす会社」を取り入れましたが、ダノンは2020年6月の株主総会で、フランスの上場企業としては初めて、その旨の定款変更を行ったのです。
つまり、本業を通じてサステナビリティを遂行し、経済的責任だけではなく、社会的な使命を果たす企業として経営を行っていく宣言を株主に対して行い、株主たちはそれを承認したのです。
ダノンの会長は、自分たちの会社は自然環境から恩恵を受けていると言います。例えば、いまの水は、15年前の自然環境の恵みです。ならば、その環境を今後も維持していかなければ、15年後、さらにその先の時代、自分たちは自然からの恵みが受けられなくなるということです。
つまり、企業として環境問題に積極的に関わっていくことは、社会のサステナビリティであるとともに、企業にとっても存続していくために必要なことであると、強い意識をもっているのです。
そこで、ダノンは、例えば、CO2の排出削減の目標値を設定し、それを達成することを企業活動の一環としています。そうした企業活動を株主たちが承認する環境が、ヨーロッパ社会では形成されてきているのです。
今後、ダノンのマネジメント・コントロールとサステナビリティ・マネジメント・コントロールの統合が、さらに、どのように進んでいくのか、私たちも注目すべきだと考えています。
次回は、日本の企業の動きについて解説します。
#1 企業もサステナビリティに関わる必要がある?
#2 サステナビリティ経営を株主は認める?
#3 日本の企業はサステナビリティを重視している?
#4 サステナビリティ経営は政治に左右される?
#5 日本の企業は時代遅れになる?
※記事の内容は、執筆者個人の考え、意見に基づくものであり、明治大学の公式見解を示すものではありません。