
座右の銘、私のモットー仕事に対し「やる気を出す」という考え方を見直そう
教授陣によるリレーコラム/座右の銘、私のモットー【1】
私に座右の銘はありません。モットーといえば、高校生のときに読んだ村上春樹の小説『1973年のピンボール』で、土星生まれの活動家が「行動が思想を決定する。逆は不可」というモットーを持ち大学の九号館を占拠していた、という文章を思い出します。当時は、そういうフレーズを言ったらかっこいいと思い、友人たちにもよく触れ回っていました。よくわかっていないながらも、文字列として好きだったんです。しかしそれが1970年代の学生運動の様子とリアルにつながるのを知って以来、そんなことを声高に張り上げる人たちが苦手になりました。
ただ、モットーではないのですが、「やる気が一番あかん」とは常々思っています。私の職場は明治大学で、大学での仕事は研究です。だから研究をします。「仕事が趣味みたいなもの」だという人もいますが、それもナンセンスな話です。仕事は社会(他人)のためにすることであり、趣味は自分のためにすることだからです。自分の喜びのためにやっていることに、誰もお金を支払ってはくれません。
やる気なんてあろうがなかろうが、やるべきことはやるべきです。職場で「やる気がないのか!」と怒る人がいますが、その怒り方自体が誤りで、やる気がなくてもやるのが仕事なのです。奮い立たせ、出させたつもりになっているやる気なんて、維持するわけがない。「やる気を出します!」「気持ちを入れ替えます!」なんて言っている人が、長続きした試しなんてありませんから。
私が仕事としている研究というのは思い通りにいかないことばかりで、そもそもしんどいものです。そんなものに理由をつけてやる気を出してもしんどいことに代わりはありません。やる気なんて出さなくても、仕事が進むようにするのが乗り切る技だと思います。やる気が起こらないことに悩む必要なんて、何一つないと思いますよ。
※記事の内容は、執筆者個人の考え、意見に基づくものであり、明治大学の公式見解を示すものではありません。