
人生のターニングポイント明治大学情報コミュニケーション学部の創設
教授陣によるリレーコラム/人生のターニングポイント【112】
わたくしが学部長を務めている明治大学の情報コミュニケーション学部は、2024年に創設20周年を迎えるに至りました。歴史と伝統を誇る明治大学短期大学を発展継承させ、来るべき高度情報化社会における人間と社会のあり方を「情報コミュニケーション」という視座から究明することを目指す、という理念を目指し設置されました。
本学部は、哲学、社会学、言語学、経済学、異文化コミュニケーションなどを専門とする第一級の先生方を擁しています。もちろん法律学の専門家もわたくし以外にいらっしゃいます。まさに他大学に類を見ない学際系学部と申せましょう。
さて、わたくしは、他大学法学部から明治大学大学院に進学し、その後、法学部助手に採用され、さらに明治大学短期大学の専任講師となりました。
大学院生時代に指導教授から「共同正犯論」をテーマとして頂戴し、助手論文を始めとして共同正犯に関する論文を書いてまいりました。自分の母校から他大学の大学院に進学することは、なかなか冒険的な色彩が強いところもありますが、幸いにしてなんとか研究者としてやっていけたのは、諸先生方との出会いがあったからだと思っています。
ここでとくに強く申し上げたいのは、短期大学に移籍した際に、当時の短期大学法律科長であられた中村義幸先生(現名誉教授)との出会いがあればこそ、ということです。
当時の短期大学は他の短期大学に比べて入試も堅調でした。しかし、そういう時だからこそ、4年生学部を設置すべきであるという短期大学内の要望は強く、それを明治大学全体に働きかけていこうという機運が高まり、幸いにして学内的にもそれを受け入れる状況となり、当時の学長のもと新学部設置準備委員会が設置されたわけです。
中村先生は、わたくしが法学部から移籍して2年後に最後の短期大学長に就任され、同時に新学部設置準備委員会の委員となり、短大内をまとめつつ、学校法人、各学部に粘り強く働きかけ、連合教授会での新学部設置承認に向けて多大なご尽力をなされました。
学部が2004年4月に開設されると初代学部長となられました。その先生の側でご苦労された場面を目の当たりにしたからこそ(わたくし自身も短大内の設置準備委員の一人でした)、学部が開設されたときの喜びはひとしおでありました。
先生とは、専門分野を異にしておりますが(先生は行政法学)、酒席の場では、昔読んだ法律学の専門書(分野は違っても基本書は変わらず)をめぐってご教示いただくことはたびたびでした。また学内でのさまざまな手続のあり方を実践的な意味で体験させていただいたことは、いうまでもありません。まさに感謝しかないと申せましょう。
その後、情コミの完成年度を迎えて、期せずして法科大学院(現在の専門職大学院法務研究科)に移籍、10年ほど在籍しまして、2019年にふたたび情コミに帰ってまいりました。その先生が初代学部長として20年前、高らかにその創設を宣言した本学部が創設20周年を迎え、先生と共に学部黎明期を経験したわたくしが、学部長として立ち会うということに、人と人との出会いの奥深さを感じている次第です。
※記事の内容は、執筆者個人の考え、意見に基づくものであり、明治大学の公式見解を示すものではありません。