
人生のターニングポイント外資系企業で知った「働き方」の違い
教授陣によるリレーコラム/人生のターニングポイント【38】
大学を卒業後、外資系企業の日本支社に勤めていました。そこでの経験が、私のターニングポイントになっています。
当時、直属の上司がアメリカ人で、日本人社員とは異なる働き方をしていることに興味が湧きました。社内は英語ができる人がほとんどでしたが、言葉が通じるからといって何の問題もないかというと、そうではありません。
例えば、周りの日本人社員はみんな残業している中、部署にいた外国人上司たちは、にこやかに「Bye!」と言って、定時で退社してしまいます。一方の日本人社員はというと、残業が終わっても「お先に失礼します」と言いながら、なんだか申し訳なさそう……。
仕事のやり方や考え方は、異なる文化の元でこれほど違う。しかも、お互いに理解を深めないと仕事は前に進まない。それがとても面白く感じて、現在の多様な文化背景の人々がともに学び、働き、暮らす「多文化共生」社会という私の研究テーマに繋がっていったと思います。
会社員時代に最も印象に残ったのは、年1回のキャリアプランについての面談時に受けた、あまり年の離れていない若いアメリカ人部長の一言でした。
部長から「今後の目標は?」と聞かれて、私はちょっと困りました。外資系企業とはいえ、当時は日本人の女性社員で最も出世していた人が課長クラス。同じくらいのレベルでしか将来を想像できず、私は「課長になることです」と話しました。
すると部長は「レイコ、目標が小さいよ!」と。
周りにロールモデルがいなくても、女性でも、もっと上のキャリアを目指してよいのだ。今となっては当たり前のことかもしれませんが、当時の私はハッとする思いでしたね。
その後、私は職場での自分の英語力の足りなさを痛感したことで留学を決意し、研究者に至る道がひらけました。常に意識してきたのは「自分で自分のキャリアを切らない」ということです。
この社会には、多様な生き方、働き方があります。途中で目指す方向は変わっても、自分の中でキャリアを繋げていく意識を持ち続けることが大切ではないでしょうか。
※記事の内容は、執筆者個人の考え、意見に基づくものであり、明治大学の公式見解を示すものではありません。