
人生のターニングポイント外部との新たなネットワークを築くことで、人も組織も成長できる
教授陣によるリレーコラム/人生のターニングポイント【111】
私のターニングポイントは、2度の米国留学です。1度目は修士課程に大学院生として、2度目は経営大学院に客員研究員として渡米し、研究者としてのスタートと成長につながりました。
学部生時代からアメリカの大学での学びに憧れ、できればアメリカの大学院に留学したいと思いつつも、卒業後、日本国内で就職しました。しかし、職場での責任が重くなるにつれ、飛び込むなら早いうちがいいと社会人2年目で退職し、アメリカの大学院でコミュニケーション学を学ぶことにしました。
海外旅行すら未経験だった私にとって、留学はまさに異文化体験の連続でした。クラスメートは自分の意見を恥ずかしがらずに言い、よく質問をする。質問をするということは、よく人の話を聴き、何がわからないかを把握したうえで、よりよく理解しようとする態度です。傾聴力や質問力など、コミュニケーションするための能力や自分の意見を主張することの重要性を痛感するとともに、研究とは何かを知り、もっと研究したいという思いを強くしました。
帰国後は日本の大学院で組織論(特に組織行動学)関連の研究を続け、博士学位を取得しました。そして、明治大学に就職した後、2年間、アメリカの経営大学院で研究をする機会を得ました。客員研究員だったのですが、博士課程の授業に参加させてもらい、初心に返って勉強し直しました。このときに組織行動学と組織論を徹底的に学びなおし、組織コミュニケーション学と組織行動学の関係という、生涯続く自分の研究テーマが明確になり、それを深めることができました。
留学を通じて多様な価値観や考え方を知り、成長できた実感があります。明治大学に戻ってからも、学外および大学以外の組織に教えに行くことなど、新しいコミュニティとのネットワークができ、多様な人の意見に触れ、視野を拡げてきました。異なるコミュニティに所属するのは、とても重要です。ネットワークが閉じられ、同じ価値観の中で同質化していくと、成長が停滞します。これは組織も同じで、同質化してくると、組織学習ひいては組織変革が起こらなくなり、時代についていけなくなります。
振り返ってみると、さまざまなコミュニティに所属し、活動してきたことで、研究者にとって重要な「新たな発想・着想」を得てきたように思います。多様な意見に耳を傾けることで、考え方は洗練されたり変わったりします。勇気をもって外の世界に飛び出すことは、いくつになっても重要なのではないでしょうか。
※記事の内容は、執筆者個人の考え、意見に基づくものであり、明治大学の公式見解を示すものではありません。