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一つの成果を上げるには、ある程度の時間がかかるもの
2024.11.06

人生のターニングポイント一つの成果を上げるには、ある程度の時間がかかるもの

リレーコラム
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教授陣によるリレーコラム/人生のターニングポイント【90】

私のターニングポイントは、就職活動に失敗したことです。就職浪人をするつもりだったのが、ゼミの担当教授からの一言で、その後の人生が決定づけられました。

大学1~2年の頃は、あまり真面目に勉強していませんでした。ダイビングクラブの活動に夢中になり、しょっちゅう海へ行って遊んでいました。しかし3年になり、土屋守章先生(当時:東京大学経済学部教授)による経営学のゼミに入り、ようやく面白い分野に出会えたと感じました。相変わらず授業は適当にしか出ていませんでしたが、土屋先生の授業とゼミだけは一生懸命、毎回予習して真面目に出るようになりました。

とはいえ、当時は普通に就職するつもりでした。ただ、就職活動を始めるのが遅く、4年の夏、3週間ほどアメリカの大学のサマースクールへ行き、その後の8月下旬からのスタートだったのです。当時は就活の時期は今よりはるかに遅かったのですが、さすがに遅すぎました。ビジネスクールに留学する人たちが、事前に英語を学ぶような場所でした。企業から派遣された人も多くいて、彼らと仲良くなり、いろいろと話す機会があったことも影響したのでしょう。就職面接のときに生意気なことばかり言ってしまい、最終で落とされたところがいくつもありました。

10月に入り、みんなが内定式に行っている頃に、先生の研究室を訪れ、就職浪人をするのに留年するから、もう1年と少しゼミに置いてくださいと挨拶をしました。すると先生が心配してくれ、企業を紹介してくださったのですが、その面接も不調に終わりました。その結果を報告に行くと、「大学院という道もあるよ」と提案してくださいました。

それまで研究者になるなんてことは、まったく考えてもいませんでした。ただ、就職活動をしながら、自分はどういう仕事をしたいとか、何が合っているのかと考えていったとき、自分の力で頑張ってその成果がはっきり出る研究者の仕事もいいなと感じるようになりました。当時の東大経済学の大学院は修士課程と博士課程が分かれておらず、第2種博士課程という5年一貫制だったので、進学すれば出口は研究者しかありません。本当に突き進んでしまっていいのか若干の迷いはありましたが、企業への就職は失敗したし、「やりたいことができるんだったらいいじゃん」ぐらいの楽観的な気持ちで、大学院へと進んだのです。

振り返って思うのは、研究というのは、まず自分で研究テーマを見つけて、その問題を解くための研究計画を立て、少しずつ答えを明らかにしていき、その成果を論文としてまとめる。そのひとつのプロセスに、だいたい3年くらいはかかります。その繰り返しと積み重ねで、だんだんと大きな仕事にまとまっていきます。他の仕事も、よく似たようなものではないかと思います。大学に勤めて管理系の仕事もしましたが、新しい制度をつくるのにも3年はかかります。逆に言えば、3年かければ、まとまった仕事の成果は出せるはず。卒業生にも、ある組織に3年いたら、どういう仕事を成し遂げたかという履歴書が書けるように頑張りなさいと話してきました。やるべきことを見つけて、成果を出す。そう考えながら仕事に取り組んできました。

※記事の内容は、執筆者個人の考え、意見に基づくものであり、明治大学の公式見解を示すものではありません。

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