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異文化コミュニケーションの「異文化」ってなに?
2024.08.28

人生のターニングポイント異文化コミュニケーションの「異文化」ってなに?

リレーコラム
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教授陣によるリレーコラム/人生のターニングポイント【80】

私は中国浙江省の寧波(ニンポー)という都市で生まれ育ちました。日本の大学へ留学して大学院に入り、家族社会学の研究者となって今日に至ります。

そんな私にとってのターニングポイントが訪れたのは、日本で国際結婚を研究テーマにしたときのことでした(なお、その後で私自身も国際結婚をしました)。

国際結婚では、お互いの「文化の違い」をどのように解釈し、異文化が彼らの結婚生活にどのような影響を与えるかがポイントになります。私はいかに異文化コミュニケーションが難しいかという観点から研究を始めました。

しかし、ひとことで「異文化」とは言いますが、当時の私にはそれを具体的に説明するのは簡単ではありませんでした。たとえば国際結婚ではなくとも、新婚夫婦は結婚・同居して数年の間はお互いの生活の作法のようなものに齟齬を発見することは多いのではないかと思います。

つまり、夫婦に「文化の違い」があったとして、それは国際結婚だから見られるのか、それとも生まれ育った家庭環境や地域に特有の文化が関係しているのか、判断が難しいということに気が付いたのです。

ビジネスパーソンの皆さんの中には、外国の人と仕事のやりとりをされる方も少なくないと思います。そのとき、語学力に問題がなくても、その人の考え方を理解するのは案外難しいなと感じることはないでしょうか?

この異文化コミュニケーションの難しさには、国や地域の文化の違いだけでなく、企業の風土の違いや男女の家庭及び社会での役割の違いまたは家族制度の違いなど、さまざまな要素が絡んでいます。

たとえば中国出身で日本で仕事をしている人を考えてみます。せっかく日本の国内企業に就職したのに急に中国へ帰国することがあって、日本の人からは不思議に思われるかもしれません。

しかし、帰国の理由には中国にいる親が子どもの結婚に使命感を持っており、「日本では結婚できないから中国に帰ってこい」と要請することや親の介護が必要で急遽帰国せざるをえないということも少なくないのです。また、場合によっては日本企業で女性という理由で活躍できない娘を見かねて帰国を要請する親もいたりします。つまり、中国人の結婚意識や親子関係、また中国社会の共働き規範が日本で生活している子世代の働き方に影響を及ぼしていると解釈できます。

異文化コミュニケーションで必要なのは会話の能力だけでなく、お互いの背景にある文化での主流の考え方、対人関係、あるいは当該社会では当たり前とされている価値観や行動様式について、ちゃんと理解する必要があります。そのことを忘れないでいてほしいと思います。

※記事の内容は、執筆者個人の考え、意見に基づくものであり、明治大学の公式見解を示すものではありません。

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