
人生のターニングポイント憲法の単位を3回落とした憲法学者
教授陣によるリレーコラム/人生のターニングポイント【45】
私は憲法学者ですが、実は、学部時代に憲法の単位を3年連続で落としています。
学部は法学部ではなく、外国語学部だったのですが、教員免許取得に必要だということで憲法の講義を受けていました。
正直に言いますと、講義の内容は全く面白いとは思えませんでしたが、一応、勉強はしていたつもりです。
なので、一回目は「どうしてだろう?」と首をかしげました。翌年の二回目では「仕方ないかもしれない」という気持ち。そして翌々年、三回目の感想は「ああ、やっぱりな」……。
当時は、なぜ自分が単位をもらえないのか腑に落ちませんでした。しかし、今ではわかります。
たとえば、テストでは「独立行政委員会の合憲性について述べよ」といった問題が出されていました。でも、私には「現に存在するのに今さらなぜ違憲とか合憲とか考えないといけないの?」と思えてならない。答案用紙にもそういう趣旨の解答を書いた覚えがあります。
ようするに、自分のような学生は学術的な前提を知らないし、教わってもいないので、問いの意図と本質がわからなかったのですね。
だから、単位を落としてしまう学生の気持ちはよく理解できます。そして、私が学生に教える立場になってからは、この経験が生かされていると思っています。
なお、私が三回目に憲法の単位を落としたときには、教員免許を目指すのはやめて、すでに司法試験の勉強を始めており、そこから憲法の世界の広さと面白さを知っていきました。
その後、早稲田大学大学院で学びました。私にとっては意外でしたが、語学ができることが法学研究に非常に役に立ちました。
その意味では、人生には何があるかわからないなと実感しています。
※記事の内容は、執筆者個人の考え、意見に基づくものであり、明治大学の公式見解を示すものではありません。