
人生のターニングポイントフィンランドの変化を見て、湧き上がった探究心
教授陣によるリレーコラム/人生のターニングポイント【27】
私のターニングポイントは、大きく変わったフィンランドを目の当たりにした時です。
フィンランドを初めて訪問したのは、まだ大学院生の時の1994年でした。北欧でも日本と同じようなバブル経済があったのですが、当時はそれが崩壊した後の頃でした。幹線道路沿いには閉鎖した会社や工場などもあり、首都ヘルシンキの中心部もおよそ活気があるといえませんでした。
実際、失業率も高く、同じくバブルが崩壊した日本より、かなり厳しい状況に思えました。その当時は「福祉国家もなかなか大変だな」というシンプルな印象を持ったことを覚えています。
それから10数年後、フィンランドを再訪する機会に恵まれました。するとそこかしこにICT企業や研究所のような施設が立ち、ヘルシンキも現代的な建物が増え、活気のある街に変わっていたのです。
私はまるで別の国へ来てしまったかのような衝撃を受けました。調べてみるとデジタル産業振興などの産業転換策や行財政改革の成功、そしてE U加盟や隣国のロシア経済の成長などの要因があったようでした。
しかし、変わったこともありますが、福祉国家であるという変わらない側面もあります。
私の専門はもともと税制の分野なのですが、この変貌を遂げたフィンランドにおいて、福祉国家をどのように維持しようとしているのかということに関心を持つようになりました。
もちろん、税制についても引き続き研究していますが、今ではフィンランドの行財政改革について調査を進めることに力を入れています。そして、福祉国家の有り様も実はフィンランドでは変わりつつあるのではないかと考えています。
みなさんも、何か変化に気づいた時、その原因を追求してみるとともに、その変化の意味を考えてみると、新しい世界が拓けるかもしれませんよ。
※記事の内容は、執筆者個人の考え、意見に基づくものであり、明治大学の公式見解を示すものではありません。