2024.03.21
- 2022年7月14日
- リレーコラム
目標とする方のスキルを吸収し、飛躍につなげよう
中村 和幸 明治大学 総合数理学部 教授歴史に名を残す偉人から、カリスマ性のある著名人、その道を究めた学者まで。明治大学・教授陣に影響を与えた人物を通して、人生やビジネスに新たな視点をお届けします。
教授陣によるリレーコラム/人生で影響を受けた人物【81】
お会いした機会は少ないですが、統計学の分野では誰もが知る赤池弘次先生を挙げたいと思います。
先生のお名前を最初に聞いたのは、大学3年時の実験講義。研究室をローテーションで回り、実際にデータ分析や回路組み立てなどを行う講義でしたが、その前に理論として学んだのが「赤池情報量規準」でした。
これはAICと呼ばれ、より良い予測を導き出す指標となるものです。当時、日本人でこのようなルールを作った人がいることに驚きましたが、正直なところ実験に必死であまりピンと来ていませんでした。
その偉大さを実感したのは、修士課程に進み、時系列解析の研究で改めて赤池先生の研究や専門書に触れたときのこと。「赤池情報量規準」が実際の問題にうまく適用できることに驚き、データ分析の研究にのめり込んでいく一つのきっかけになりました。
その後、赤池先生が過去に所長を務められていた統計数理研究所の大学院(総合研究大学院大学)へ博士後期課程で進学。私の指導教員をはじめとする多くの方から、先生が現場を大切にされ、工場などに出向いてデータ分析をしていたというエピソードを、たくさん教えてもらいました。
研究理論はもちろん、その背景にある考え方、現場主義の精神など、さまざまな人を介して先生の一面を知ることができ、今の私の研究スタイルにつながる大切なことを教えてもらったような気がします。
また、先生は2006年、科学や技術、思想・芸術の分野で貢献した方に贈られる「京都賞」を受賞されました。
当時院生だった私は講演会に参加。そこで、「赤池情報量規準」の発見に至るまでの過程を聞くことができ、大きな刺激を受けたのです。また、後日開催された記念シンポジウムにカメラマンとして駆り出され、ごく短い時間ですが、直接お話しさせていただくこともできました。
赤池先生から直接指導を受けたわけではありませんが、研究に向き合えば向き合うほど、また周囲から話を聞けば聞くほど、多くの学びが得られたと思います。
皆さんの働かれている場所でも、能力の高い方がいらっしゃるのではないでしょうか。たとえ接点がなくとも、周りのこぼれ話から飛躍につながるヒントが得られるかもしれませんよ。
※記事の内容は、執筆者個人の考え、意見に基づくものであり、明治大学の公式見解を示すものではありません。