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心を開いて、積極的にコミュニケーションを図ろう

伊藤 貴昭 伊藤 貴昭 明治大学 文学部 准教授

歴史に名を残す偉人から、カリスマ性のある著名人、その道を究めた学者まで。明治大学・教授陣に影響を与えた人物を通して、人生やビジネスに新たな視点をお届けします。

教授陣によるリレーコラム/人生で影響を受けた人物【73】

学生時代に学習塾でアルバイトしていましたが、そこで出会った人たちには、教育という今の仕事につながる影響を受けたと思います。

教師を目指そうと思ったのは、高校時代に全く分からない授業があったから。こんなに分からない説明があっていいのかという怒りから、きちんと説明できる先生を目指そうと大学に進学しました。

その訓練として学習塾でのアルバイトをスタート。いざ授業を始めると、生徒が辞めるかもしれない、丁寧に説明しても点数が伸びないかもしれない、といった塾ならではの難しさを体感しました。

さらに、授業の質も生徒のやる気を引き出す声掛けも先輩や同期の方が上手で、自分は全然できていないとずっと感じていたんです。

実感としてはダメダメでしたが、なぜか生徒ウケは良かったんですね。塾長も事務の方も私のことを評価してくれていました。先輩の立ち居振る舞いを見て、吸収して、身につけていったことが功を奏したのかもしれません。

今振り返ってみると、塾長や事務の方、先輩、同期、後輩みんなが一つの組織で力を尽くす姿を見て、自分はここでどうあるべきかをすごく考えさせられました。

私の場合は理工学部を卒業後に文転し、さらに大学院に進学したので、学生生活も塾でのバイト歴も10年以上。多くの人と関りながら、自分が何に向いているのか、周りからどう見られているのか、といったことが明確になったと思います。

また、私にとって塾は交流の場所でもありました。母親世代だった事務の方の家に、同僚と一緒にしょっちゅうお邪魔して、夜通し飲んだり、歌ったり、担当クラスをどうしていくのか話し合ったり。

こうした人との出会いや活発なコミュニケーションを通して、“自分”というものが形作られたような気がします。

さらに、先生、院生、学部生が集まる理工学部時代の研究室では“研究とは何か”、文転した際の指導教授からは“価値のある研究とは何か”、先輩からは“具体的な研究方法や論文の書き方”を学び、今の仕事の礎になっています。

専門を突き詰めていくことももちろん大切ですが、様々な人とコミュニケーションを重ねる中で自分の新たな側面が見つかることもあるはずです。そのためには、自分から心を開いて相手に接していくことが鍵になるかもしれません。

※記事の内容は、執筆者個人の考え、意見に基づくものであり、明治大学の公式見解を示すものではありません。

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