人生で影響を受けた人物女性も夢を諦めず、一歩ずつ前向きに取り組もう
教授陣によるリレーコラム/人生で影響を受けた人物【63】
私が影響を受けた方々は、気づけば女性の方々ばかりでした。
一人目は歌人の与謝野晶子です。きっかけは小学生の時、課題発表のために読んだ伝記でした。
働く女性がまだ珍しかった時代、母として、妻として、経済的にも家族を支え、強くたくましく生きる姿に圧倒されたのです。たくさん読んだ伝記の中でも一番の衝撃でした。
読んだ時は彼女のような生き方に憧れていたわけではありません。しかし働く今、経済的に自立し、能力を糧に生きるたくましさは、同じ女性として目指していきたいところです。
次に影響を受けたのは、義母から贈られた本『私の科学者ライフ‐猿橋賞受賞者からのメッセージ』に載っていた女性研究者の方々です。
猿橋賞とは、自然科学の分野で優れた研究業績を収めた女性科学者に贈られる賞のこと。本の中では先生方の研究内容はもちろん、女性ならではの苦労話も紹介されていました。それが私に重なる部分もあり、とても励まされました。
その一方で、先生方との間にギャップを感じたのも事実。私自身、2018年に農芸化学若手女性研究者賞をいただきましたが、猿橋賞を受賞された先生方には遠く及びません。少しでも近づくことが今の目標になっています。
三人目は、共同研究者でマックスプランク鳥類研究所所属のMaude Baldwin博士です。2012年にスウェーデンの学会会場で出会って以来、良き研究パートナーであり、大切な友人でもあります。
一緒にハチドリやヒヨドリの味覚センサーについて研究を重ね、その成果が科学誌「Science」に2度掲載。1報目と2報目の間に、お互い出産・育児を経験しました。
私は女性であることにデメリットを感じていませんが、彼女は元々、研究と子育ては両立できないという考え方の持ち主。しかし、私が両立しているのを見てやれると思ったそうです。研究に打ち込めない時も助け合える関係性を築けたのは幸運でした。
かつては女性だから研究が続けられないという先生方もたくさんいらっしゃいました。今でこそ女性のための制度も増えていますが、こうして私が研究を続けられるのも先輩方の努力の賜物です。
これからは女性であることが働くうえでメリットになることも増えていくのではないでしょうか。皆さんもやりたいことを諦めず、一歩ずつ前に進んでいってください。
※記事の内容は、執筆者個人の考え、意見に基づくものであり、明治大学の公式見解を示すものではありません。