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気づきのきっかけを与えて、飛躍を後押ししよう

矢﨑 友嗣 矢﨑 友嗣 明治大学 農学部 専任講師

歴史に名を残す偉人から、カリスマ性のある著名人、その道を究めた学者まで。明治大学・教授陣に影響を与えた人物を通して、人生やビジネスに新たな視点をお届けします。

教授陣によるリレーコラム/人生で影響を受けた人物【30】

私が研究の世界に飛び込むきっかけを与えてくれたのは矢部和夫先生(現・札幌市立大学 名誉教授)です。先生は植物生態学、私は環境気象学と専門分野は異なりますが、共同研究を通じて研究の面白さを教えてくださいました。

私が最初に取り組んだのはウェットランド(湿原)の研究です。今でこそ様々な機能があると言われていますが、当時はあまり着目されていませんでした。なぜ湿原は干上がらず湿原であり続けるのか、といった純粋な興味から私の研究は始まったのです。

フィールドサイエンスの研究においては、フィールドでの観察と観測から現象をデータ化して何が起きているのか理解し、問題を抽出するというプロセスがあります。これを生態系の維持や環境保全に生かしていきます。

このとき、良いと言われている、あるいは役に立つという視点だけではなく、自然環境や生態系がどう成り立っているか機能と構造をしっかり理解して対策を打っていくこと。先生からはこうした一連のプロセスが大切だと教わりました。

一緒に研究を進める中で、こうしなさいという具体的な指示はあまりなかったのです。一方で、様々な現場において現象の本質を追求して問題を解決していく先生の姿、そして何よりも研究を楽しんでいる様子をずっと見てきました。

意図していたのかは分かりませんが、振り返ると“言わずに見せる”ことで気づきを与えていたのかもしれません。

今は私も研究室を持ち、学生を育てる立場です。矢部先生が私の気づきを待ち、研究の枠を超えて育ててくれたように、私もすべてを与えるのではなく、自分自身が研究を楽しんでいる様子を見せることで、学生が何かに気づき、興味や関心を深めてもらえるように心がけています。

もし皆さんが部下への指導に悩んだときには、一から十までフォローをするのではなく、「きっかけ」を与えながら、「気づき」を待ってみるのも一つの方法だと思いますよ。

※記事の内容は、執筆者個人の考え、意見に基づくものであり、明治大学の公式見解を示すものではありません。

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