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思い込みを捨て、物事を多角的に判断しよう

清水 晶紀 清水 晶紀 明治大学 情報コミュニケーション学部 准教授

歴史に名を残す偉人から、カリスマ性のある著名人、その道を究めた学者まで。明治大学・教授陣に影響を与えた人物を通して、人生やビジネスに新たな視点をお届けします。

教授陣によるリレーコラム/人生で影響を受けた人物【62】

私が行政法の研究に携わるようになったのは、2人の“原田先生”の存在が大きいです。

まずは、水俣病研究の第一人者である医師の原田正純先生。

大学の法学部に入って環境問題を巡る様々な法制度について勉強する中、水俣病の裁判に関心を持ち、原田先生の講演を聞きに行きました。

水俣病のことは中高の社会の教科書にも出てくるので知っていたつもりでしたが、映像や写真の紹介とともに原田先生の経験に裏打ちされたお話を伺い、教科書的な知識とはまったく違う、現場でしかわからない世界が広がっていることに圧倒的な衝撃を受けたのです。

最初に病気にかかったのは社会的にも経済的にも弱い立場の人だということであったり、患者さん同士でも色々な分断が存在するということであったり。

水俣病患者としてひとくくりにするのではなく、その中でもどういうところにしわ寄せがいっているのかを丁寧に把握すべきこと、その人たちを守るには行政が前面に立たなくてはならないこと、そして、行政を動かすにはどうしたらよいのかを考える必要があることを学びました。

法学者の原田尚彦先生の著書『行政責任と国民の権利』に出合ったのは、ちょうどその時期。

行政法というのは、もともとは、権力が暴走しないよう、行政の活動を抑え込むという発想なのですが、水俣病の例を見ても明らかなように、それだけだと弱い人たちが苦しむ状況は必ずしも改善されません。

この点、原田先生の著書は、行政が事業者に規制をかける必要もあるのだということをわかりやすく説き、その発想を支える画期的な理論構成を提示していたのです。

この本を読んで大変感銘を受け、環境問題に取り組むには行政法がカギになるということを強く意識するようになったことで、行政法の研究を志すようになりました。

最後に、大学教員という職業に目を向けさせてくれた私の父親についても、一言触れさせてください。

父は、理系の研究者なので分野は異なるのですが、大学教員をしていて、正月には研究室の学生さんを自宅に呼んで新年会を開くのが常でした。

これからを担う学生さんたちとお酒を飲みながら、技術や社会の将来について喧々諤々と語り合う。そういう父の姿を、幼いころから見てきました。

個人を尊重し、多様性を重んじ、自由に批判しあい、創意工夫や異論を歓迎する。そういう世界を毎年のように目の当たりにする中で、いつからか、大学という環境に魅力を感じるようになり、大学教員という仕事にも惹かれていくようになったのです。

私がいま所属している情報コミュニケーション学部では、原田先生たちから私自身が学んだように、多角的に物事を捉えることを重視しています。

一つの方向から見ると当然だと思うことも、別の方向から見ると全然違う印象を受けることもある。

皆さんも、自分のやっている仕事をちょっと違う視点から考えてみると、ブレイクスルーのきっかけがつかめるかもしれませんよ。

※記事の内容は、執筆者個人の考え、意見に基づくものであり、明治大学の公式見解を示すものではありません。

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