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行き詰まったときは、心の“ふるさと”に帰ろう

駒見 和夫 駒見 和夫 明治大学 文学部 教授

歴史に名を残す偉人から、カリスマ性のある著名人、その道を究めた学者まで。明治大学・教授陣に影響を与えた人物を通して、人生やビジネスに新たな視点をお届けします。

教授陣によるリレーコラム/人生で影響を受けた人物【13】

私は学生時代、スイスの文学者ヘルマン・ヘッセの作品が好きで、愛読していました。ヘッセは詩と小説で知られ、1946年にノーベル文学賞を受賞した人物です。

実は、ヘッセの本と出合ったのは、不純な動機からでした。高校時代、本屋で「春の嵐」というタイトルにビビッと来て、持っていたらかっこいいんじゃないかと思い、購入に至ったのです。

それからしばらく積読状態だったのですが、あるとき何気なく読み始めたところ、衝撃を受けました。

不慮の事故により、身体障害者となった主人公の青春の悩みや友人関係が細やかに表現されており、私自身が抱いていた心の葛藤と重なる部分もあって、読む手が止まらなかったのです。

特に印象的だったのは、丁寧で美しく心に迫る風景描写。読んでいると、私の心のなかで、その風景が鮮やかに浮かんでくるのです。それは非常に感動的なものでした。

そのことをすっかり忘れていたのですが、30代前半に偶然読み返したとき、これまで自分の心のなかで「ふるさと」として描いていた風景は「春の嵐」のものだったと気付き、驚いたのです。

今でも、困難にぶつかったときや、考え事をするとき、あるいは気持ちを休めたいときは、この「ふるさと」の風景のなかに入ります。そうして自己をゆっくり見つめ直すのです。

きっとヘッセの作品は、私の一部になっているのだと思います。皆さんも、何かに行き詰まったときなどに、“心が癒される一冊”を持っておくといいかもしれませんね。

※記事の内容は、執筆者個人の考え、意見に基づくものであり、明治大学の公式見解を示すものではありません。

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