
2022.06.28
明治大学の教授陣が社会のあらゆるテーマと向き合う、大学独自の情報発信サイト
いまやクリエイティブな職種に留まらず、多くのビジネスパーソンにとって発想力や企画力は必須のスキル。ライバルを一歩リードするのに役立つヒントを、知の先達である明治大学・教授陣の言葉から探ります。
私が生物の研究をしていて面白いと思うのは、微生物でも何でも生命というのは非常に賢いということです。
いまの世の中はAIが発達し、たとえば自宅に帰ってきてスマートスピーカーに「ただいま」と言うと、ラジオや照明、エアコンが点くなど、ネットワークで何でもできるようになっています。
もともとは1個1個独立したシステムで各々ボタンもありましたが、それを統括するボタンを設定し、ネットワークを繋げることで、1つのスイッチで多数のことが実行されるようになりました。
実はこうした仕組みは生物も持っているのです。生物がさらされた環境変化に対して、利用すべき遺伝子を指示することで、上手く適応できるというような仕組み、すなわち制御ネットワークが構築されています。1つのスイッチに対して、多い場合は数百を超える遺伝子が連動している場合もあります。
生命というのは地球がつくり上げた仕組みであり、人間が頭で考えてつくったシステムよりも長い期間に渡り、厳しい環境の変化にさらされ、自然淘汰を繰り返しながら新しい制御ネットワークをつくり、生き延びてきたものです。
私はこうした生物の仕組みの合理性に美しさを感じます。生物の仕組みを研究することで、何に応答し、何を動かすべきか、というシステムの構築方法も理解することができます。
いまは生物学関係の読みやすい本も出ていますし、ネットにも様々な情報が出ていますので、ぜひ生物のもつ制御ネットワークに対して意識を向けてみてください。ビジネスの世界にも通用するような作業の効率化・合理化に関するアイデアが生まれたり、組織論や経済学に繋がる発見があるかもしれません。
※記事の内容は、執筆者個人の考え、意見に基づくものであり、明治大学の公式見解を示すものではありません。