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同性パートナーシップ条例と多様性国家・日本 ―内向きな愛国心が日本をダメにする―

鈴木 賢志 鈴木 賢志 明治大学 国際日本学部 教授

「日本人としての一体性」が多様性を排除する

 ――先生が指摘する、多様なものを受け入れる寛容さは、昨今失われていると思われます。むしろ多様性を排除、排斥する傾向が高まっているのではないでしょうか。

そうです。そこでもう一つ考えねばならないのが、日本における愛国心の高まりです。愛国心は私も持っていますし、それ自体が問題ではなく、むしろ国民に必要な心性でしょう。しかし今、日本で突出している愛国心と呼ばれるものは、「日本人としての一体性」を求め、それが同性カップルなどの多様性を排除するという運動の背景にあると見ています。国を愛することは決して悪いことではないのですが、それが多様性を排除するような形で盛り上がることは決して望ましいことではないと考えています。
日本は古代から近代に至るまで、多彩な宗教、思想、文化等を柔軟に受容してきた国です。それによって、島国でありながら、偏狭な世界に孤立することなく今まで歩んできました。多様性の受容、尊重こそが、日本の伝統的価値観なのです。その意味で、「同性カップル」を否定し、いびつな愛国心、伝統的といわれる価値観にしがみついている人こそ日本人の伝統に反しているとも言えるのです。

背景にある日本の国力の減弱

 ――そのような動きが顕著になってきたのは、ここ数年のことと思われます。その背景には何があるのでしょうか。

少し前まで、日本は一流の経済大国でした。しかし、その経済力は中国に抜かれ、国内の景気も長らく低迷し、「何となくダメな日本」という空気の蔓延が背景にあると思います。ダメになってくると、過去の古き良き時代、ダメでなかった時代の価値観にしがみつく傾向が生まれます。言うまでもなく、戦前・昭和が良き時代でも、ダメでなかった時代でないのにもにもかかわらず、それにしがみつくことで日本の良さを強調し、「日本人の一体性」を求め、異質なものを排除する動きが一部で高まっていると思われます。なお、このような動きは、何も日本に限ったものではありません。世界を見渡してみると、旧共産圏やヨーロッパの一部の国々にもそのような傾向が認められた時期がありました。
2020年の東京オリンピック開催は、そうした動きを一層加速しているように見受けられます。世界のスポーツの祭典というより、国威発揚の場と考える人たちにとって、東京オリンピック開催は日本が自信を取り戻す上で格好の材料となっています。

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