コロナ禍で「電子書籍サービス」が普及する一方、場所としての図書館の価値も増す
次に公共図書館が大きく変容するのは、2000年前後にかけてです。
バブル経済が崩壊し、経済社会の状況が大きく低迷するなかで、市民は暮らしや仕事において、解決するべき多様な課題を抱えるようになります。21世紀に入って地方分権改革がさらに進み、市民一人ひとりが十分な情報や知識をもって、地域の問題解決に取り組むことが求められるようになってきました。
そうしたなか、2006年、文部科学省が設置した図書館のあり方を検討する有識者会議が、議論の成果として「これからの図書館像-地域を支える情報拠点をめざして」という報告書を発表しました。報告書では、従来の貸出に加えて、市民の課題解決に役立つ資料や情報を提供するレファレンスサービスにも力を入れることで、「地域の情報センター」としての役割を果たすことの必要性が指摘されました。
これを契機に、図書館では課題解決支援サービスが広まります。図書館が知的資源や情報資源を提供することで、市民の暮らしや仕事に貢献するという新たな局面が見出されていきました。
さらに2010年代に入ると、情報通信技術のさらなる進展により、電子書籍サービスを導入する図書館が増え始めます。電子出版制作・流通協議会の調査によると、電子書籍サービスを導入している公共図書館の割合は、2014年5.1%、2020年12.8%、2024年50.7%です。2020年以降、急速に導入が進んだ背景には、コロナ禍で設けられた「新型コロナウイルス感染症対応地方創生臨時交付金」の存在が大きく、感染拡大を防止するために、交付金を活用して電子書籍サービスを導入する図書館が増えました。コロナ禍では、紙の書籍に関しても、利用者はあらかじめ図書を予約し、図書館員を介さずロッカーに預けられたものを受け取る非接触型の貸出サービスが増えていきました。
図書館サービスにおいて資料のデジタル化、ネットワーク化が進む一方で、資料の収集・保存・検索・閲覧・貸出といった図書館本来の役割を見直し、物理的な「場所としての図書館」でサービスを行うという側面にも焦点が当てられるようになってきました。館内に設けられた多様な空間では、静かに読書や勉強をするのはもちろん、ディスカッションやグループワークができたり、イベントや講座を開催して市民同士が交流したり、学びあったりすることも可能となっています。
電子書籍が増え始めた2000年前後から、物理的な図書館は不要になるのではないかと言われるようにもなりましたが、本や資料を提供することに加えて、新たな役割も広がってきているといえるでしょう。
※記事の内容は、執筆者個人の考え、意見に基づくものであり、明治大学の公式見解を示すものではありません。
