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2025.04.03

環境負荷が小さい製品を生みだすカギは、設計段階にあり

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環境に配慮した製品設計は、市場競争での優位性の構築につながる

 消費者の環境配慮行動を促進するための仕組みづくりも、共同研究で模索しています。基本的に消費者の行動が変わらなければ、環境に配慮したものづくりは成り立ちません。日本人は欧米人よりも“新しいものをより好む”傾向がある国民性です。どこかの部品が壊れた場合も、新しい部品で修理するか、新しい製品に買い替えることが一般的で、リサイクル部品を使って修理することができても、比較的新しい部品や製品を使いたがる傾向にあります。

 どうすれば環境負荷を軽減することのメリットが消費者に伝わるのか。どのような情報を提供すれば消費者が環境配慮行動を意識してくれるのか。たとえば我々の共同研究では、車の修理の見積書のなかに、新品部品、リユース部品、リビルド(分解修理)部品それぞれのコストとCO2排出量を記載する試みを行っています。今後は、それぞれどのくらい走り、乗り続けるかによって、どの部品を選ぶと消費者の製品価値、環境性、経済性を含むトータルのパフォーマンスが高くなるかという情報を提示し、どのような条件であれば新品ではなくリサイクル部品を選んでくれるのかを検証したいと思っています。

 消費者自身が環境配慮行動を選択するようになれば、企業の環境対応もさらに加速する可能性があります。ヨーロッパでは環境に配慮した製品を選ぶ消費者が増えており、規制や税制の影響からも、その傾向は強まりつつあります。また、環境に優しい設計をしようとすると、新しい技術を模索するので、機会として新しい市場が創出される可能性も高まります。最近では、企業の環境などに対する取り組みを評価基準にして銘柄を選定する投資手法もあります。

 コストや性能とのバランスを求める消費者も多く、国や市場による差はありますが、先進国を中心に、世界では持続可能性を重視する製品を求める傾向が年々高まっています。これらのニーズに応えた製品設計は、製品寿命の延長やリサイクル性の向上、コスト削減だけでなく、市場競争での優位性を生み出す糸口にもなるはずです。

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※記事の内容は、執筆者個人の考え、意見に基づくものであり、明治大学の公式見解を示すものではありません。

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