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2024.02.15

COVID-19による経済への影響と支援策から見えた、日本の危機

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便益が最も高い政策を取るため、客観的データに基づいた数値解析を

 内閣府は半年に1回、経済財政に関する中長期的な試算を公表していますが、そこでの将来想定は、かなり楽観的なケースも想定しています過去数十年の経済成長率を見ても、日本はほとんど成長していません。欧米に比べ、日本は設備投資も非常に遅れており、IMF(国際通貨基金)などの国際機関から何度も指摘を受けています。そんななかで3%近い成長率を達成し続けると想定している内閣府の一部の試算は、かなり非現実的です。

 経済支援政策は、長期的な視点で考えることが本来、重要です。我々も含め世界の経済学者が指摘していることは、今の政策で日本経済を維持させるのは不可能に近いということです。このままいけば、財政危機によって事実上経済破綻をしたギリシャの二の舞になりかねません。

 さらに言うと、100年ほどの間に人口が半減するとも言われている極端な少子高齢化が進む日本社会で、経済が安定的に成長するとは考えられません。よほどの技術革新が起きない限り、維持すらままならないでしょう。何かあると政治家はすぐ国債発行でまかなおうとしますが、将来の世代に借金を先送りして、今いい顔をするのはさすがにもうやめるべきです。全部さらけ出し、大幅な財政カットをしない限り、日本の経済は立ちゆかなくなります。

 国民から理解を得るためにも、正しい政策判断を行うためにも、論理的な思考に基づいて、エビデンスを示すアプローチがますます重要になります。経済学は、そのための学問とも言え、現実社会に反映されなければ意味がありません。ただ、日本では残念なことに、数式を当てはめるだけの絵空事だと誤解されることもあり、欧米のように経済学を正しく認知されてこなかった場合も少なくありません。経済学的な視点の本流は、非常に実学的で有意義なもの。為政者は、費用を差し引いて得られる便益が最も高い政策をとるべきです。

 これは何も国だけでなく、個人にも言えることです。一般企業でプレゼンをする際も、感情的に訴えかける熱意も大切ですが、その熱意を裏付ける論理的な説明がなければ説得できませんよね。根拠は何か、どうプラスになるのか。なるべく客観的なデータに基づき現状を分析したうえで、最善の提言はこうだと示すことが大切です。何かを提案する際には、これだけ費用はかかるけれど、こういった便益があるということを、客観的なデータをもとに計算し、いかに精密な数字で示せるかがカギを握っています。現代社会を理解し、よりよい社会をめざすためにも、経済学的なアプローチや視点をもつことは重要だと言えるでしょう。


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※記事の内容は、執筆者個人の考え、意見に基づくものであり、明治大学の公式見解を示すものではありません。

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