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2024.02.15

COVID-19による経済への影響と支援策から見えた、日本の危機

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日本が25兆円も投じた経済支援策で得られた効果は、2.7 兆円程度

 今回の分析結果について、より詳しく見ていきましょう。コロナ禍により、鉄道や航空や宿泊業などに影響があったことは皆さんのご存知でしょうが、とくに航空業界はマイナス72.0%という大打撃を受けています。メディアでもあまり取り沙汰されておらず私自身も意外だったのは、輸出入が減ったことによる輸送機械工業への影響です。業界も大きいため4.5兆円以上もGDPが下落したと見られます。そのほか飲食サービスが3.8兆円、生活娯楽産業が2.8兆円ほどマイナスになっています。

 逆にプラスになった業界もあります。巣ごもり需要により、物流関係が上昇。また、ゲーム機が高い売上げを示しました。教育を含めオンラインでできるサービスもプラスになっています。全体的に小売りも盛況となり、1%を超えるぐらいGDPにプラスになったようです。

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今回の数値解析的一般均衡モデル分析によって算出された、各業界に与えたCOVID-19のマイナスとプラスの影響

 政府の経済支援策による影響も解析しました。中小企業への支援金や1人あたり10万円の特別定額給付金など、政府はコロナ関連の経済支援として総額25兆円を使いました。その結果、総GDP を1.39 %増加させ、プラスの効果は2.7 兆円を超えたと考えられます。一連の経済政策がなければ、マイナス4.21%となった GDPの減少幅を、2.91%ぐらいにまで縮小。すなわち15.4 兆円近くにのぼると考えられた損失額を13兆円弱までに食い止められたのではないかと予測できます。

 しかし逆に言えば、25兆円も使って2.7 兆円ほどの効果しかなく、もっと別の使い方があったのではと正直思います。投じた25兆円は、金利もつけて将来の世代がすべて負担することになります。お金の拠りどころを国債発行でまかなった以上、将来世代にツケを回した影響も分析しなければなりません。

英語版はこちら

※記事の内容は、執筆者個人の考え、意見に基づくものであり、明治大学の公式見解を示すものではありません。

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