労働組合が機能していない今、労働者代表機関の法制化が重要に
労働組合は、つくろうと思えば誰でもつくれる組織で、たった2人の新入社員でも容易に結成できるものです。それほど簡単に作れるもかかわらず、社長との交渉を労働組合法が保障するなど、さまざまな特権を享受できます。しかし、日本での組織率は低下の一途を辿り、ピークだった1949年が55.9%だったのに対し、2022年の推定組織率は16.5%と過去最低を記録。ほぼ機能しなくなっており、世界的には増えて問題になっているストライキも、日本ではほとんど起こりません。
そもそも労働組合が会社と一体化しているのは日本だけです。もはや企業の中の制度になってしまっているため、企業の利益が優先され、労働者がひどい目に遭っても戦わない。こんな状態では、労働者共通の利益をめざして行動することなんてできません。一方、海外の労働組合は、企業から独立し、産業別に組織されている場合がほとんどです。どこの企業に雇われているかに関係なく、その産業で働いている人々の労働条件について経営者団体と話し合い、その改善をめざしています。
しかしそれだけでは、各企業や事業所固有の細かな問題には対応しきれません。そこでヨーロッパでは、労働組合とは別に、労働者を代表する機関を法律で定めるという方式が定着しています。これは企業の事業所単位で組織されるもので、例えばドイツなら、代表者が選挙によって選出され、その事業所固有の労働者の処遇について、使用者と話し合って決めていくようにしています。
この労働者代表機関は、労働組合と違ってストライキは禁じられています。その代わり、労働組合では立ち入れない点まで、使用者と議論して決定づけることができます。
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