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国が「してくれないこと」はあきらめるしかないのか?

清水 晶紀 清水 晶紀 明治大学 情報コミュニケーション学部 准教授

リソース不足を乗り越えるための工夫もある

 実は、行政が、リソース不足を不作為の理由とすることは、いままではほとんどありませんでした。事故や災害の背景に行政の不作為がある場合にも、その事故や災害は想定できなかった、という言い方が多かったのです。

 しかし、科学技術の向上などによって、綿密で明確な想定ができるようになってきています。福島原発事故についても、10mを超える津波が押し寄せる可能性を事業者自身も試算していたということです。

 では、なぜ、対策が講じられるように規制しなかったのか。それは、本当にリソース不足であったのかもしれませんし、あるいは、なんらかの恣意的な理由があったのかもしれません。

 重要なのは、不作為の本当の理由を把握し、恣意的な不作為を繰り返させないようにしていくことです。要は、不作為を正当化する可能性のあるリソース不足を「隠れ蓑」にさせないことです。

 ただし、本当にリソース不足が原因だとしたら、まさに、ない袖は振れません。そうすると、行政の活動にも優先順位をつけざるを得ず、実施が遅れるものも出てくると思われがちです。

 とはいえ、行政活動の内容によっては、民間のリソースを使うなどの工夫もあるはずです。実際、駐車違反の取り締まりでは民間委託が実施されています。公共図書館や公園の運営も民間委託が進んでいます。

 民間に委託しても問題がない活動に関しては、それを進めることで、行政でなければできないことに行政のリソースを集約させることが可能になるのではないでしょうか。

 また、不作為について、やらない、もしくは、やれない理由を行政がきちんと立証する仕組みをつくることも、非常に重要だと考えています。

 例えば、市民が行政の不作為について訴訟を起こす場合、現在は、原告側の市民が行政の不作為の法的問題点を立証しなければならない場合が多いのです。

 これが、逆に、行政側に立証負担を求める仕組みになっていれば、行政は日頃から必要な活動を怠ることはできなくなりますし、リソース不足を言い訳にすることもしづらくなるはずです。

 実際に、アメリカでは、そうした議論が盛んになっているのです。

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