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土壌は資源であり、持続的な活用のためには知恵が必要

加藤 雅彦 加藤 雅彦 明治大学 農学部 准教授

副産物の再利用と土壌資源の保全との両立が持続的な土壌の活用に繋がる

 副産物とは、目的生産物に伴って副次的に発生するものを指します。野菜くずなどは、農業副産物になります。

 下水汚泥、家畜のふん尿、食品廃棄物や鉄鋼業などから出てくるスラグ(金属の精錬の際に副次的に発生するもの)など、工業製品の中から出てくる副産物もあります。

 こうした副産物を土壌に再利用することも必要と考えています。土壌を“資源”と捉えた場合、このような未知の副産物を利用することは土壌の資源価値を低下させる危険性もあるため、副産物を利用しないほうが良いのかもしれません。

 しかし私は、知恵を絞りながら一見矛盾する両者を両立し、持続的に土壌を活用していく時代にきていると思います。その理由のひとつは、副産物が大量に出てくることです。従来は、こうした、いわゆる不要なものは主に埋立て処理されていましたが、国内には、もう埋立地となる場所がなくなってきているのです。

 もうひとつの理由は、農業の肥料資源が世界的に枯渇してきていることです。

 実は、リンやカリウムなど、農業の肥料は鉱物から作られています。これら鉱物が枯渇してきているため、石油やレアメタルのように戦略資源のように扱う産出国も出てきています。これは、非常に重大な問題です。

 例えば、米は国内で需要をまかなえる量を生産していますが、そのために必要な肥料は、実は、すべて海外から輸入しているのです。これがなくなったら大変なことになります。米でさえ国内で十分量を得ることができなくなるかもしれません。

 ところが、例えば、生ごみなどの養分を含んだ副産物、すなわち未利用資源を、ところかまわず農地の土壌に混ぜても良いのかというと、決してそうではありません。

 そうした生ごみの中には病原菌が入っていたり、雑草の種などが入っていることもあります。それらを撒くのは土壌を一種の汚染させるようなものです。

 また、生ごみには分解されやすい有機物がたくさん含まれているため、それを土壌に混ぜると、土壌の中で急激に分解が進行し、土壌の中の酸素を低下させ、作物の生育を悪くすることになってしまいます。

 いくら副産物の再利用が重要でも土壌の資源価値を低下させるのは問題です。野菜くずなどの農業副産物を発酵させて堆肥など、有機肥料にする方法があります。それは、確かに有効なひとつの方法です。

 どのような副産物が土壌の資源価値を低下させず使えるのか、その使い方を明らかにすることが必要と考えています。また、問題のある副産物を利用できるようにすることも必要と考えています。

 つまり、副産物がもっている養分を上手く使う方法を見つけることが、世界的な肥料資源の枯渇対策であり、土壌資源の保全と持続的な活用に繋がっていくことになります。

 日本は少子化で人口減少が問題になっているため、気がつきにくいのですが、世界の人口は増加中です。2050年までに増える人口に対して、それを養えるだけの作物を生産できる土地はないと言われています。

 将来的には、土壌がなくても大量の作物が生産できるようになるかもしれませんが、まだまだ難しいのが現状です。

 最初に述べたように、私たちは土から離れて生きていけないのです。しかも、人自身が適切な措置をとらなくては、土壌資源の持続的な活用はできません。

 こうした問題に、みなさんの関心が高まることが、将来にわたる食糧問題や環境問題の改善に繋がっていくと思います。

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※記事の内容は、執筆者個人の考え、意見に基づくものであり、明治大学の公式見解を示すものではありません。

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