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人類の危機を救う植物の秘めた力を解き明かす

瀬戸 義哉 瀬戸 義哉 明治大学 農学部 准教授

年間1兆円もの被害を救う可能性

 現在、私が取り組んでいる研究のひとつが、ストリゴラクトンという植物ホルモンです。このストリゴラクトンは、アフリカで第二の緑の革命を起こす大きな可能性を秘めています。

 実は、アフリカにはストライガという根寄生植物が繁殖しています。根寄生植物とはあまり聞き慣れないと思いますが、宿主となる植物の根に自分の根を潜り込ませて導管を連結させてしまい、そこから水や養分を収奪して生きる植物です。

 寄生したストライガは紫色の花を咲かせ、1個体で10万粒くらいもの種をつけます。この種は非常に小さく、まるで粉のような感じです。これが土壌に散布されると、駆除することはほぼ不可能です。

 しかも、大きな問題は、ストライガは主要な穀物の根に寄生するのです。そのため、アフリカでは、緑色の畑が、一面、紫色に覆われる光景も珍しくありません。

 実際、ストライガによる農産物の被害額は年間数千億円とも、1兆円に上るとも言われています。そのため、ストライガは「魔女の雑草」とも呼ばれているのです。

 このストライガの種は地中で眠ったまま50年以上も生き続けられます。それが、穀物の根が自分の近くに伸びてくると、それを察知して発芽し、寄生するのです。そのメカニズムの解明にも多くの日本人研究者が携わってきました。

 実は、土の中にはアーバスキュラー菌根菌(AM菌)という菌が生息しています。彼らは、植物の根を通して、光合成の産物である糖を受け取り、植物にはリンなどの無機栄養素を供給するという共生関係にあります。

 この共生を活性化するシグナルとして、植物ホルモンであるストリゴラクトンが根から放出されているのです。ところが、ストライガも、このストリゴラクトンをシグナルとして認識し、それによって寄生する相手がいることを感知して発芽することが明らかにされています。

 つまり、このストリゴラクトンの生成を止めてしまえば、ストライガは発芽することができず、穀物に寄生することはできなくなりますが、一方で、植物にとって重要なAM菌との共生関係を築くことができなくなってしまいます。

 また、ストリゴラクトンには、植物の枝分かれを制御するというホルモンとしての機能もあるのです。

 このように、ストリゴラクトンはひとつの作用だけでなく、植物の生長の様々な面に作用するため、良い作用を伸ばし、悪い作用を抑えるということが、研究の重要なテーマとなっているのです。

 例えば、同じストリゴラクトンであっても、化学構造の異なるものが自然界にはたくさん存在しています。そのなかには、寄生植物の発芽は促しにくいけれども、AM菌との共生を促進する機能は保持されているものがあることがわかってきています。

 しかし、化学構造の異なるそれぞれのストリゴラクトンが、すべての植物で同じように作用するわけではないこともわかっています。

 これらの植物ホルモンの仕組みを解明することは複雑で難しい研究ですが、その成果は、緑の革命とまで言われるような農業の発展に寄与したり、種なしぶどうのように新たな品種を生んだり、年間1兆円にも上る農作物の被害を救う可能性もある分野なのです。

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