明治大学の教授陣が社会のあらゆるテーマと向き合う、大学独自の情報発信サイト

「縁」から見える日本の農村の多様性と持続性

明治大学 農学部 准教授 服部 俊宏

縁に目を向けることによって自分の可能性を広げることもある

服部 俊宏 日本の沿岸地域は、海による災害の縁でもあります。2011年の東日本大震災の津波では、それをあらためて思い知らされました。それでも多くの人々が、その地で復興しようとしています。そこには海の恵みがあるからです。

 すると、津波の被害を映像などで見た都市生活者がボランティアに行ったり、そこに高さ10mの防波堤を造ることや、高台に住宅地を造成することが推進されます。

 日本人はボランティア活動が少ない国民だといわれてきましたが、こうした災害などをきっかけとしてボランティア活動が増えたのは、日本人の心の中にこうした活動を行う気持ちが潜在的にあったからだともいえます。少なくとも、ボランティアに参加した人たちは、沿岸地域の被災を自分たちの問題として捉えたのです。

 一方で、海では、その恵みを巡って近隣諸国との衝突が起きています。領海や漁獲高など、決めたルールを守らないことが原因です。しかし、それは映像などで都市生活者に知らされることはほとんどありません。

 すると、多くの人は外国との摩擦の方を心配します。問題に直面する漁師たちが我慢して、余計な波風は立てずにいてくれれば良いと思います。国民の総意のようなものが盛り上がらなければ、漁師たちを守るための予算が積極的に投入されることもありません。

 確かに、問題に直面する漁師は、圧倒的に少ないかもしれません。しかし、問題は、縁で起きている問題を知ろうとしなかったり、私たちの問題と捉えないことなのです。

 縁は地域の問題だけでなく、私たち一人ひとりの生き方にも関わってきます。例えば、会社に勤めている人でも、中心で自分のことしか見ていない人は、縁で起きていることに関心をもちません。

 ところが、縁に目を向けると、見える風景が広がり、それは自分の可能性を広げたり、伸ばすことに繋がるかもしれないのです。都市農業に目を向けた都市生活者によって、農業を見る目が変わり、自分自身の生活を豊かにする市民農園が広がっていったように。被災地に目を向けること、知ることによって、ボランティアに駆り立てられたようにです。

 まず一度、自分の身の回りから見回してみてください。そこにあった縁にある問題と対峙することが、あなたの行動を広げたり、それがあなたの評価を高めるきっかけになるかもしれないのです。

>>英語版はこちら(English)

※記事の内容は、執筆者個人の考え、意見に基づくものであり、明治大学の公式見解を示すものではありません。

社会・ライフの関連記事

男か女かハッキリしたがる/させたがる不思議

2019.7.10

男か女かハッキリしたがる/させたがる不思議

  • 明治大学 文学部 准教授
  • 佐々木 掌子
遺伝子組み換えが怖いのは、目先の利益で行っていること

2019.7.3

遺伝子組み換えが怖いのは、目先の利益で行っていること

  • 明治大学 農学部 専任講師
  • 島田 友裕
人から、メタボやアレルギー性疾患がなくなる!?

2019.6.26

人から、メタボやアレルギー性疾患がなくなる!?

  • 明治大学 農学部 准教授
  • 石丸 喜朗
令和元年にあらためて思う、日本人は元号が好きだ

2019.6.12

令和元年にあらためて思う、日本人は元号が好きだ

  • 明治大学 法学部 教授
  • 加藤 徹

Meiji.netとは

新聞広告連動企画

新着記事

2019.08.07

生物化学は、「より良く生きるための医療」に貢献する

2019.07.31

万葉集に由来する「令和」に込められた、時代にふさわしい願い

2019.07.24

使い心地の良い道具は、道具ではなくなる

2019.07.17

フランス人はなぜデモを続けるのか

2019.07.10

男か女かハッキリしたがる/させたがる不思議

人気記事ランキング

1

2019.08.07

生物化学は、「より良く生きるための医療」に貢献する

2

2015.10.21

うつ病の対処に必要な「援助希求」という能力

3

2018.05.23

衰える結婚、止まらぬ無子化 ――このままでは日本の未来が失われる

4

2014.09.01

緊急提言、人口減少社会に歯止めをかける ―方策は少子化対策、社会…

5

2017.01.24

#1 少子高齢化が進むと社会はどうなる?

Meiji.net注目キーワード

【注目!】連載コラム