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2018.09.19

「司法取引」で名前を出されただけで逮捕されることもある

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被疑者・被告人に有利なことばかりではない

山田 道郎  「司法取引」制度は、被疑者・被告人でも、捜査機関がもっていない共犯者に関する情報をもっていれば、利益が得られる制度であると思われがちですが、実は、決してそればかりではありません。例えば、裁判所は「司法取引」の合意には拘束されません。検察官が協議の合意に基づいて求刑を軽くしても、実際の量刑を決めるのは裁判所です。もちろん、公判前に「司法取引」があることは裁判所にも伝えられますが、求刑があまりにも軽い場合、裁判所がどう判断するのかは、今後の運用を見ていかないとわかりません。また、「司法取引」によって不起訴となった場合も、検察審査会によって強制起訴されることがあり得ます。一般的には、検察審査会の決定の方が、「司法取引」の合意よりも上と見なされます。被疑者・被告人は、ある意味、喋り損、となることもあるわけです。さらに、協議が合意に至らなかった場合、被疑者・被告人の供述を、本人の公判において証拠として採用することはできませんが、捜査のきっかけとして利用することは認められています。つまり、供述が採用されず、刑の減軽が得られなかったにもかかわらず、その供述を基にした捜査によって新たな証拠が見つかり、被疑者・被告人が不利益になるケースもあり得るわけです。今後は、被疑者・被告人が守られる仕組みも考えなくてはいけないかもしれません。

※記事の内容は、執筆者個人の考え、意見に基づくものであり、明治大学の公式見解を示すものではありません。

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