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「共謀罪」法が問題だらけになったのは、オリンピックのせい!?

鎌田 勇夫 鎌田 勇夫 明治大学 専門職大学院 法務研究科特任教授(退任)

オリンピックにこだわって、あまりにも拙速

 なぜ、このような問題や危惧を残すような立法になったのか。それは、国会での議論が尽されなかったからです。例えば、天皇陛下の生前退位の問題については非常に慎重で、多くの学者の意見を聞いた上で、議論が尽されました。同じように、「共謀罪」法についても、多くの刑法学者の意見を聞き、その上で議論を深めることが必要でした。なぜ、このように拙速に立法したのか。それは、2020年の東京オリンピックまでに「国際組織犯罪防止条約」に加盟したかったからでしょう。確かに、世界中が注目するオリンピックで不祥事が起きると、国の威信や信用に関わります。しかし、だからといって重要な立法を慌ただしく成立させるのでは、本末転倒です。オリンピックにこだわるのもわかりますが、国際条約に加盟したからといって、オリンピックを無事に運営することができるわけではありません。そのためには、むしろ、テロを防遏する力をつけることが先決でしょう。例えば、マンパワーを高めたり、各国間の司法共助を進めてテロ犯の摘発をしやすくすることなど、国際条約に加盟していなくても、できることはたくさんあります。さらに、日本には既に「組織犯罪処罰法」もあれば「予備罪」もあります。これらの現行法で、オリンピックの安全な運営に十分に対応できるという議論もあります。さらに、オリンピックには、これら現行法の範囲を拡張する時限立法で対応し、オリンピック後に、じっくり議論を深めてテロ対策の法案をつくるという方法もあったと思います。今後、この「共謀罪」法が、捜査機関の解釈によって弊害を起こすようなことになれば、何をおいても見直しに着手し、厳密な立法を目指して議論を深めることが最重要です。

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