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2017.09.13

女性が活躍する未来の農村のために

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魅力ある農業、魅力ある地域づくりへ

大内 雅利 では、どうしたらこうした農村を変えられるのでしょうか。内部から変わってきている面もあります。例えば、都市で会社勤めをしていた農家の娘さんが、跡継ぎがいないため、就農を決心して村に帰り、農業法人を設立したケースがあります。また、農産加工やレストラン経営で成功しているケースもあります。こうなると、活躍する女性を核として、地域や男性が動き始めます。

 しかしこのような女性はごくごく少数です。何が必要なのでしょうか。

 キーワードの一つは「未来の農村女性」です。従来の生活視点と人権視点の女性政策はすでに農村に住んでいる女性を対象としたものです。地域や家族の生活を改善しよう、社会的地位の向上を図ろうというものです。「現在の農村女性」を対象とした政策でした。

 今の「農業女子プロジェクト」は元気な女性が農村を動かしているというメッセージの発信です。女性が活躍できる地域であることを、地域の外に向けて、「未来の農村女性」に向けて発信しているのです。もちろん一人で頑張っている若い「現在の農村女性」を元気づける、ネットワークを通して仲間を増やす、という目的もあります。「農業女子プロジェクト」は「現在の農村女性」と「未来の農村女性」に向けての政策なのです。

 ではメッセージを受信する「未来の農村女性」の立場から考えてみましょう。「未来の農村女性」はいろいろな地域のなかから、「生きたい地域」を選択するのです。地域は「生きたい地域」として選ばれるのです。逆に地域も「未来の農村女性」を選びます。このようにして、地域と女性の間には、お互いに選び選ばれるという関係が生まれます。地域は「未来の農村女性」を選び、「未来の農村女性」は「生きたい地域」を選ぶという訳です。地域は「現在の農村女性」ばかりでなく、住んでくれるかもしれない「未来の農村女性」にとっても「生きたい地域」でなければなりません。

 もう一つのキーワードはダイバーシティです。住民の多様性です。特に女性の生き方やライフスタイルは多様になりました。農業とは関係ない仕事、都会生活、海外体験など、いろいろな経験を重ねて、今の農村に移り住んでいるのです。「未来の農村女性」は「現在の農村女性」以上に多様な生活を経験しているはずです。多様性を許容し、尊重し、さらに推し進めて、相乗効果をもたらすような政策が望まれるでしょう。

 このような新しい状況のうえに、生活視点、人権視点、産業視点というこれまでの政策を総合的に組み立てていくのです。「女性が生きたい地域」として選ばれるためのヒントは、すでに出尽くされています。実践するか否かが、これからの課題です。

※記事の内容は、執筆者個人の考え、意見に基づくものであり、明治大学の公式見解を示すものではありません。

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