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耳をすませばリアルな音が聴こえてくる ―音環境と人間の感覚の行方―

明治大学 理工学部建築学科 准教授 上野 佳奈子

身体、聴覚、音、人間社会

 現代日本に目を向けてみましょう。インターネットやスマートフォンの爆発的普及で、デジタル化された情報、すなわち符号化されたものに振り回される時代が到来しました。符号化されたものによるやり取りがもたらしている社会の弊害は各方面で指摘されています。たとえば“引きこもり”が可能なのも、家の中に居ながらにして、符号によるコミュニケーションができるからです。それが犯罪を誘発する可能性もあります。符号化されたものに振り回される社会が、魅力的で暮らしやすい社会とは思えません。私たちは、もう一度、“身体”に立ち戻る必要があります。それは身体の存在を意識し、身体が本来持つ感覚を呼び覚ますことです。その対象の一つが聴覚であり、聴覚がとらえる“音”なのです。イヤホーンで音楽を聴く人も多いですが、そこで鳴っているのは本来の音空間が持つ音の響きではありません。演奏家の“身体”が奏でる音こそが、音楽の響きだと私は思います。人と人とのコミュニケーションも同様です。リアルに響く音を通して、実体のあるコミュニケーションが可能になります。符号化されたものから離れて、耳をすませば、リアルな音が聴こえてきます。身体を通して響き合うそれらの音は、あるべき人間社会に不可欠なものと考えています。

※掲載内容は2013年11月時点の情報です。

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※記事の内容は、執筆者個人の考え、意見に基づくものであり、明治大学の公式見解を示すものではありません。

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