人間の腕のように自由度の高いロボットアームが、4D作業の担い手に
産業用ロボットにも、さまざまな種類があります。水平方向にアームが動作するスカラロボット(水平多関節ロボット)や並列につながったリンク(軸)が連携し高速で稼働するパラレルリンクロボット(高速多関節ロボット)など、それぞれの特長を生かした活躍を見せています。なかでも注目されているのが、ロボットアーム(垂直多関節ロボット)です。直線運動や円運動しかできないロボットとは違い、人間の腕のような動きができて自由度が高く、人間に行えることはほぼ再現可能です。
ロボットアームは、6軸機構が主流です。6軸を用いてX・Y・Z軸方向の移動と、X・Y・Z軸周りの回転の6自由度を実現しています。対する人間の腕は、動かしてみればわかりますが、肩関節が3軸方向、肘関節が1軸方向、手関節が3軸方向の可動域をもっています。同じにするには7軸必要となりますが、3次元空間での作業に必要な動作をするだけなら6軸あれば充分です。汎用性が高く、搬送や溶接、塗装や組立てなど、幅広い工程に導入されています。

作業領域が広いのも大きな特長です。工作機械による加工では、これまで機械の中に入るサイズのものしか加工できませんでしたが、ロボットアームは腕を伸ばすことで、より大きい部品も扱えるというメリットがあります。また、ものを運ぶ際にも、X軸で動くようなクレーンであれば、動かす距離よりも長いレールが必要になりますが、ロボットアームなら腕を伸ばして移動させられるので場所を取りません。
たとえば人間が手作業で何カ所かのボルトをひたすら締める場合、身体に負担がかかりますし、単調な作業を繰り返すことで疲弊し、ケアレスミスも起こしかねません。しかし、ロボットならその心配は要りません。従来、熟練の職人がやるような精密な作業は苦手でしたが、ロボットの性能もどんどん上がってきており、より速く正確に動けるようになってきています。
ロボットが壊れない範囲であれば、いくら空気が悪くても暑くても寒くても稼働させられるのも重要なポイントです。切削や塗装などを行う環境では空気を吸い込むのも身体に悪いおそれがありますし、材料によっては触れると危険なものもあります。ロボットであれば、人間にはとても辛い4D作業が問題なく可能です。人間にとっては過酷な状態でも精密性を発揮できるよう、さらに進化しつつあります。
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