IT活用の状況もIT投資の意識も、日米では大きく異なっている
日本の企業におけるパソコン所有率は、現状90%を超える状況です。スマートフォンは、総人口の倍ぐらい契約台数があります。インフラ的な整備はなされているものの、活用状況はどうなのか。経済産業省が2008年に示した日本企業のIT活用状況のデータ(下記)によれば、6割以上が第2ステージ以下、つまりITをうまく活用していない状況です。それに対し、アメリカでは逆に6割以上がIT経営と呼ばれる第3~4ステージに達しています。この傾向は、その後もあまり変わっていないと言われています。
日本におけるITの活用には、企業内の「部門の壁」が大きく立ちはだかっていることがわかる
IT投資に対する意識も、少し前まで日本の経営者は、ほとんどがコスト削減や業務効率化ばかりを目的としていました。社内で完結する“守り”の意識で投資をしても、売上げは伸びません。それに対してアメリカの企業は、市場の分析強化や新技術の利用、新製品の開発や顧客の獲得など、外に働きかけて業績を上げる“攻め”の意識でITに投資をしています。ITを潜在的な力を伸ばし発揮するために活用する、つまり今日的には、DXとは何かを理解して推進しているかどうかの差が、日米の生産性の差となっていると言えるでしょう。
DXに向かってデジタル化がどれぐらい進んでいるかといったアンケートをとると、回答者による主観の差が出てしまいます。そこで、東京商工会議所は、日常業務の在り方から4つのレベルに分けて、中小企業の実態を把握すべくアンケートを実施しました。紙や口頭でのやり取りによる業務が多い場合はレベル1、紙や口頭でのやり取りをITに置き換えているならレベル2、ITを活用して社内業務を効率化しているならレベル3、競争力をつけるためにITを活用していればレベル4として現状を聴いてみました。(下記)。結果、全体でいえば半分ほどがレベル3以上に見えますが、1万以上の企業にアンケート票を送って戻ってきたのが約1,300社で、それは比較的意識の高い方々が返してくれているでしょうから、実際にレベル3以上の取り組みができているのは全体の3割にも満たないかもしれません。
従業員規模が小さく、平均年齢が高い企業ほどデジタルシフトが進みづらく、利益傾向も厳しい状況にある
取り組みが進んでいない二大要因は、20年来言われていることなのですが、まずIT導入にかけるコスト面。費用対効果がわからないという理由もそうです。もう一つは、社内にDXを推進できる人材が足りないこと。中小企業のうち85%を小規模企業者(製造業は従業員20人以下、商業・サービス業では5人以下)が占めています。DX人材を社内で育成できればいいのですが、物理的に難しいのが現状です。
※記事の内容は、執筆者個人の考え、意見に基づくものであり、明治大学の公式見解を示すものではありません。