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2023.03.22

AIを使えばだれでも名画を生み出せる?

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見直されるアナログ、発展するデジタル

 画像生成のAIがさらに普及し、絵を描くことが苦手な人でも自分のイメージを絵にすることが容易になっていくと、絵画とは、言語表現を補ってコミュニケーションをよりスムーズに快適にする道具として機能するようになるかもしれません。

 そうなっていったとき、アートとしての絵画とは、今後どういった形に変化していくのでしょうか。画像生成のAIが、絵画の新たなうねりのきっかけになるかもしれません。

 一方で、デジタル技術が発展すると、そのバックラッシュが起きることもあります。

 例えば、スマートフォンが普及しきったデジタルネイティヴの若い世代を中心にインスタントカメラが見直されています。彼らはインスタントカメラに触れた経験はないので、単なる懐古趣味とは言えません。レコードなどにも若い世代の関心が高まっています。

 それらの古いメディアの特徴は、人の行為が痕跡として刻まれることです。

 デジタルは容易にコピーを生み出し、それはだれもが共有できる同一の情報になるのに対して、痕跡が刻まれたものは個別性が高く、その一回性が魅力的にうつるのかもしれません。

 音楽は「データとしてデバイスから流れてくるもの」と認識する世代にとって、形あるものとしてレコードを手に取り、それをプレーヤーにかけて聴くという行為は特別なのだと思います。

 彼らが古いメディアに感じる魅力とは、特定の人の痕跡が刻まれた「もの」を手にすることで感じられるコミュニケーションの強度のようなものなのかもしれません。例えば手書きの手紙では、書き手の筆跡がその人の物理的存在を読み手に意識させますが、これまでのデジタルカルチャーはメディアのそうした側面を軽視してきました。

 AIをはじめとするデジタル技術は、今後これまで見過ごされてきた一回性の価値も取り込みながらその表現を進化させていくと思います。

 これから様々な新しい表現手段が出てくると思いますが、新しいメディアに出会った時、まずは実際に使って楽しんでみることをおすすめします。

 すると、あなたの作品が高い評価を受けるかもしれませんし、プロのアーティストの創造力を感じるきっかけとなって芸術作品を見る視点も変わってくるかもしれません。そうしたことがあなたの生活をより豊かにしていくことに繋がっていくと思います。


英語版はこちら

※記事の内容は、執筆者個人の考え、意見に基づくものであり、明治大学の公式見解を示すものではありません。

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