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折紙式3Dプリンタの様々な特徴

 折紙式3Dプリンタの特徴のひとつは、素材を選ばないことです。

 積層型3Dプリンタの場合、現在、素材は樹脂が中心です。もちろん、溶かして積み上げることができる素材であれば、例えば、紙や鉄でも可能です。しかし、費用を考えれば、そこまでして紙で作る意味はないでしょう。

 鉄を溶かして積み上げる装置は実際に既にありますが、やはり、かなり高価ですし、装置もかなり大きくなります。それでは、デスクの横にあって、設計者がすぐに出力できるという3Dプリンタの、そもそもの価値がなくなってしまいます。

 一方、折紙式3Dプリンタの場合、素材が紙などであれば、作られた展開図を基に人が折ることができます。素材が鉄板などの場合は、それを折ることができるロボットの開発も進めています。

 すると、設計者は、三次元のCADデータを入力すれば、好きな素材で折り上げられた立体物をすぐに手にすることができるようになるわけです。

 また、私たちは、人工物にしたいものを写真に撮れば、例えば、人や動物でも、その写真から展開図を作るシステムも開発しました。CADデータを作ることができなくても、誰でも立体物を作ることが可能になるのです。

 さらに、装置の大きさ以上のものを作ることはできない積層型3Dプリンタと違い、展開図をベースに作る折紙式3Dプリンタは、装置以上の大きさのものを作ることも可能になります。例えば、等身大の人の立体物を作ることもできるのです。

 また、折紙式3Dプリンタの最大の特徴として、いま、世界中が注目しているのが、メタマテリアルを創造することです。

 メタマテリアルとは、人為的に手を加えることで自然界の物質にはない性質を持った物質のことです。例えば、音の振動を完全に遮るという、一般にはあり得ない性質を持った人工物などが造られています。

 そうした性質のひとつに、展開収縮があります。それは、必要に応じて形を大きくしたり、小さくすることができる性質です。皆さんも、宇宙機の太陽電池パネルに、こうしたメタマテリアルが使われているというニュースを聞いたことがあるのではないでしょうか。

 これは、まさに日本の折紙の技術を応用したものです。すなわち、大きなパネルを効果的な折り方で縮小してロケットに積み込み、宇宙では、縮小した状態から元の大きさに簡単に展開することができる技術です。

 こうした展開収縮の性質を持ったメタマテリアルを、折紙式3Dプリンタは容易に造り出すことができるのです。

 従来は、メタマテリアルのアイデアがあっても、それは複雑な形であることが多く、それを実際に形にするのは大変でした。しかし、折紙式3Dプリンタはそれを形にする展開図を作ることができるのです。

 さらに、これも日本で発展した技法のひとつである切紙の技術を加え、折り線だけでなく切り線も入れた展開図を作るシステムを、私たちは開発しています。

 私たちが開発したアルゴリズムは、折紙では難しかった複雑なハニカム構造などを、切紙にすることによって、ひとつながりの展開図にすることを可能にしています。

英語版はこちら

※記事の内容は、執筆者個人の考え、意見に基づくものであり、明治大学の公式見解を示すものではありません。

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