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2020.12.09

あなたは、得があれば個人情報を差し出しますか?

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情報を相対化し、客観的に捉える能力が重要

 AIなどによるデータ分析の活用は会計分野でも期待されています。例えば、会計情報による不正会計検知です。

 よく、AIの活用は人の職を奪うと言われますが、会計士にとって会計情報のチェックは大変な作業であるため、これをサポートし、負担を軽減するという意味で、AIの活用は非常に期待されているのです。

 そこで、会計士なども参加し、会計情報から不正パターンを検知するアルゴリズムの開発が進められているのです。

 このように、AIによるデータの活用が様々な分野で進められているのですが、ただし、いま、AIシステムの導入を考えている事業者は、AIがなんでも答えを出してくれるような魔法のシステムとは思わないことです。

 例えば、AIを効果的に活用しようとすれば、データが豊富なほどその計算精度は上がります。そのため、自社が持っている顧客データや商品データなどだけでなく、できるだけ様々なデータを収集することが求められます。

 すると、ハードやソフトだけでなく、データ収集やその管理などのコストも必要になります。そうした総コストに対して、どれだけの収益アップが望めるかは定かではありません。つまり、現在の技術水準では、AIは決してコスパの良いシステムとは言えないのです。

 人のサポートとして、必要な部分を柔軟に取り入れていくくらいの考え方が良いのではないかと思います。

 一方、消費者や生活者の目線で言えば、よく言われるように、リテラシーを高めることが大切になります。

 例えば、利便性や得があるなら、多少の個人情報を引き換えにしても良いというのも、ひとつの価値観だし、考え方です。それでも、個人情報を渡すことのリスクを考えたり、その個人情報がどのように管理され活用されるのかに注意を払う必要はあります。

 また、事業者が需要予測や動的価格設定を進めれば、なにが定価かわからなくなっていくでしょう。すると、消費者は、得られた情報の中だけで得と思わされるような状態になるかもしれません。

 要は、消費者は、マーケティングの中で操られる存在にもなりかねないわけです。その意味でも、リテラシーは重要なのです。

 また、会計情報から不正パターンを検知するシステムができれば、不正パターンと検知されないアルゴリズムを考える者も出てくるでしょう。つまり、ここでも、得られた情報が作られた情報ではないのか、その判断が必要になってくるわけです。

 人は、得なことや、信じたい情報には惑わされやすくなります。一度、情報を相対化して、客観的に捉える能力、すなわちリテラシーは、ビッグデータがAIによって活用されるようになればなるほど、私たちにとって、とても重要なスキルになっていくと思います。

>>英語版はこちら(English)

※記事の内容は、執筆者個人の考え、意見に基づくものであり、明治大学の公式見解を示すものではありません。

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