日本とアセアンの架け橋となる人材育成を目指す
私は、いま、「明治大学アセアンセンター」で仕事をしています。
このセンターは、本学とアセアン諸国の高等教育機関や社会との交流、連携を推進し、多くの実務分野においてたくましい「現場力」を発揮できる、日本とアセアンの架け橋となりうる実務型リーダーを、日本とアセアン双方に育成することを目的として、2013年にバンコクに開設されました。
私は、本学の学生に向けた「東南アジア理解」などの講座をもつとともに、センターの運営にもたずさわり、双方の留学生のサポートなども行っています。
タイに留学してきた日本の学生と接していると、素直でシャイな学生が多いことがわかります。あまり、自分から積極的にタイの学生たちに話しかけることがないのです。
ところが、タイの学生にとっては、同じ大学の学生は仲間です。自分が仲間と見なせば、日本人の留学生にもどんどん話しかけます。その人が戸惑ってもお構いなしなのです。
日本人の留学生は、当初、そうしたことに圧倒されますが、すぐに、それがタイの魅力であると思うようになり、そこに惹かれていくと言います。
逆に、日本に留学したタイの学生は、日本人の謙虚さや、他人に迷惑をかけない思い、清潔できれい好きなところなど、タイにも共通する文化を感じ、日本が大好きになります。タイに帰国した後も、日本の友人とコンタクトをし続けています。
こうしたことは異文化コミュニケーションの第一歩ですが、異文化理解の本質の部分でもあると思います。互いの特徴は、良いとか悪いではなく、魅力であることがわかっていくことです。
そうした理解は、ものごとの見方や自分の価値観を広げてくれます。それは、必ず、その人の将来に役立つと思います。
例えば、いま、タイでは約6000社もの日系企業が活動されていると言われます。その数は、今後もどんどん増えていくと思います。盛んになるビジネスの場で、タイと日本双方の留学生は力を発揮できると思います。
そうした人材を育成することが「明治大学アセアンセンター」の目標のひとつなのです。
もう、大学を卒業し、働いている日本の社会人の方々も、今後、タイとの交流の機会が増えると思います。
そのとき、カルチャー・ギャップを起こさないためには、タイ人の考え方や行動パターンを日本の常識に当てはめるのではなく、その違いを魅力として捉えてみてください。ルーズと見えていたタイ人の行動パターンが、おおらかさに見えてくると思います。
そもそも、四方を他国と接しているタイは、昔から様々な人々の交流拠点であり、貿易の拠点でもありました。
文化や価値観の異なる国や民族の人たちとの交渉の積み重ねの歴史の中で、コミュニケーション・スキルが磨かれるとともに、自分たちの価値観を押しつけたり、計画通りにいかないことに苛立つのではなく、自分は自分でありながら、相手の立場を尊重したり、臨機応変に対応する柔軟性が培われ、タイ的自由主義の根幹になっていったのだと思います。
それに、タイ人は、日本の文化や日本人が大好きなのです。そうしたことを理解していれば、タイとの交流はどんどん広がると思います。
※記事の内容は、執筆者個人の考え、意見に基づくものであり、明治大学の公式見解を示すものではありません。