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アメリカ・ファーストでは、国際経済の新たな秩序づくりはできない

小林 尚朗 小林 尚朗 明治大学 商学部 教授

新たなグローバル・スタンダードはアジアから生まれる

 本来であれば、新たな国際秩序もWTOなどグローバルな場で構築されていくことが良いのでしょうが、現実的には難しい状況です。

 その中で、私が注目しているのは、東アジアの地域協力です。

 東アジアは、いくつかの危機を経ながらも、これまで半世紀もの長きにわたって世界の成長センターであり続けた地域です。多種多様な国々が、緩やかな経済統合によって、緊密な生産・流通ネットワークを構築してきました。

 また、数多くの会議外交、地域協力の場が形成され、自らの事情や要望をもとに協議し、妥結できるルールづくりを目指してきました。「無差別」と「多国間主義」を実践してきた地域と言えます。

 東アジアの国々にとって、アメリカと中国は、どちらも欠くことのできない重要なパートナーです。両国との良好な関係を維持することが、これからの東アジアの成長、さらには世界全体の成長のためにも必要となります。

 その実現には、アメリカの一方的な二国間主義を回避し、中国の一帯一路政策を地域全体の実りある公共財にできるような、両国と対等に協議・協力できる枠組みが必要です。

 例えば、日本、中国、韓国、インド、豪州、NZ、ASEANの16カ国による自由貿易地域構想であるRCEP(東アジア地域包括的経済連携)は、インドが離脱の意向を示すなど難しい状況にありますが、本来的には有力な枠組みです。

 RCEPでの地域協力が進展すれば、アメリカとも対等に交渉できるようになるし、中国を東アジアの多国間秩序に取り込むことができます。それは、世界全体の新たな国際秩序の基盤の1つともなり得るでしょう。

 そうした中で、日本は重要な役割を求められていくと思います。各国の利害調整役はもちろん、自らが率先して譲歩と妥協を進め、地域協力を主導することが必要になります。

 私たち日本人は、これまで欧米に目が向きがちで、アジアや発展途上国と言われる国々から学んだり、協力したりという姿勢がまだまだ欠けていました。

 例えば、アジアから、世界に躍進する企業や人材がどんどん出てきています。では、彼らはどうやって成長したのかというと、必ずしも、欧米的な成功のプロセスによってではないのです。アジアならではのやり方、それに日本から学んだやり方もそこにあるのです。

 従来の国際秩序が行き詰まり、新たな秩序が模索され始めているいま、アジアを尊重し、アジアから学ぶことが、日本には必要です。

 アメリカのやり方でも中国のやり方でもない新しい正解は、東アジアの地域協力から生まれてくる可能性が大きいと思います。私たちは、いままさに、その過渡期にいるのです。

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※記事の内容は、執筆者個人の考え、意見に基づくものであり、明治大学の公式見解を示すものではありません。

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