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歴史を紐解くと見えてくる、台湾の親日の複雑な思い

明治大学 理工学部 教授 林 ひふみ

複雑な日台関係、中台関係の結果としてある親日

鈴木 秀彦 1971年に中国は国連に加盟し、国際社会で積極的に外交を進めていきます。すると、それまでは中国の代表のように見なされていた台湾の中華民国が失脚していきます。

 日本も、1972年に日中国交正常化となり、台湾とは公的には断交することになります。

 一方、国民党を率いていた蒋介石が1975年に亡くなり、息子の蒋経国が後を継ぎます。彼は父の路線を継承しますが、晩年に、戒厳令を解除し、本省人である李登輝を副総統に就任させます。

 この李登輝が、蒋経国が亡くなった1988年に総統に就くと、一気に民主化を進めるのです。

 なぜ、蒋経国は本省人である李登輝に後を託したのか。

 ひとつには、国民党が中国本土に打ち返すのはもう無理だと、認めざるをえなかったからかもしれません。

 また、国際社会で認められていく中国に対して、台湾がそれ以上に認められるためには、欧米と同じような民主制度を構築することが必要だと考えたのかもしれません。

 いずれにしても、李登輝は様々な改革を断行して民主化を進め、1996年には総統の直接選挙で再選されました。

 さらに、1986年に結党した民進党(民主進歩党)は住民自決を謳い、本省人たちの支持を集めていきます。2000年には、本省人である陳水扁が民進党から初めて総統に就きます。

 当初は非常に期待された陳水扁でしたが、スキャンダルにまみれ、経済も悪化させてしまいます。

 野党となっていた国民党は反民進党の立場もあり、台頭する中国経済との関係を強めようとします。

 2008年の総統選挙で選ばれた国民党の馬英九は、初めて中国に直行便を飛ばすなど、実際に中国との関係強化を図ります。

 すると、台湾企業が中国に進出することもできましたが、一方で、台湾に押し寄せた中国人たちが、台湾の不動産を買い漁り、不動産価格の高騰を引き起こします。

 また、台湾の新聞社やテレビ局が中国資本に買われ、親中国の記事や放送が流されるようになったのです。

 そのため、台湾は経済的に少し潤ったとしても、中国に対して自由にものが言えない雰囲気の社会になっていったのです。

 こうした状況に対する危機感もあり、学生たちが立法院に突入して占拠する「ひまわり学生運動」が2014年に起きています。

 そして、その後の2016年の選挙で、反中国の立場をとる民進党の蔡英文が総統に就くのです。

 もともと、中国共産党に敗れ、反攻することを目指していた国民党が親中国になっていることは、一見、不思議に見えます。

 でも、そこには、反中国の民進党と反対の立場をとることがあるとともに、共産党が統治する中国であっても、そこは自分たちの故郷である大切な中国だという複雑な思いがあるのです。

 それは、台湾生まれの三代目、四代目の世代になっても、外省人をルーツにもつ彼らのアイデンティティになっていると思います。

 一方で、清に見捨てられた思いと、日本の統治にも激しく抵抗した経験をもつ本省人をルーツとする人たちが多い民進党は独立志向が強く、中華民国ではなく、台湾共和国を名乗りたい思いがあります。

 また、差別はあったにしても、当時はアジアで最も進んだ技術や文化に浴した日本統治時代の方が、国民党による戒厳令時代よりもましだったという意味で、彼らは親日的なのです。

 日本と中国に対してとても複雑な経緯があった、いまの台湾の人たちを、だから、単純に親日と一括りにすることはできません。

 ただ、台湾の歴史の中から私たちが学べるのは、民主主義とは、一度できあがればそのまま続いていくものではなく、経済などの要因や、自分たちと異なる意見を叩き、排除しようとするような人々の行動で、反対方向にも向かっていくものだということです。

 それは、私たちにとっても他山の石とすべきことだと思います。

 最後に、近年、台湾は日本人にとって人気の観光地になっています。

 台湾の研究者としては、それはそれでうれしいのですが、観光情報だけでなく、こうした台湾の歴史や政治状況にも関心をもってもらえれば、海洋と大陸の両方の文化が混ざっていることや、台湾の人たちの複雑な思いを知り、台湾の魅力をもっと発見できると思います。

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※記事の内容は、執筆者個人の考え、意見に基づくものであり、明治大学の公式見解を示すものではありません。

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